ココでしか体験できないイベントを連日開催する飲食店

水族館プロデューサー・中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2017秋 〜科学離れと水族館の理科教育〜(vol.28)』 ライブレポート(17.10/15開催)

2018年02月13日

【 前半の部 】

1.水族館における理科教育の現状とは

 

いよいよ水族館や博物館が行っている
”理科教育” が抱える問題点に斬り込む…

中村さんとテリーP

 

テリーP
「中村さん、今日のテーマ『科学離れと理科教育』についてですが、ずいぶん難しそうというか、堅いというか…。」

中村さん
「うん、今日はちょっとややこしい話やで! 俺、思うんやけど、水族館が『理科だ!』『科学だ!』と言えば言うほど、逆に理科離れや科学離れを起こしているのと違うかって!?」

テリーP
「無理矢理に押し付けられるとそうなりますよねぇ。僕は本を読むのが大好きなのですが、子供の頃は学校の先生に読書感想文を書かされるのが嫌で嫌で…。怪人二十面相とか自分が読みたい本を自由に読みたいのに…。」

中村さん
「怪人二十面相では読書感想文は書けへんよなぁ(笑)」

テリーP
「そうなんです。だから結局、読書感想文を書くために、読みたくもない小難しい内容の本ばかり選んで読んでいました。そのせいで国語の授業も先生も大嫌いになりましたよ。」

中村さん
「うん、そうなるわな。俺も(読書感想文は)大嫌いやった!」

でも、そこは流石の中村さん。 読書感想文の宿題に対する反抗心から、中学生では絶対選ばないようなエミリー・ブロンテの恋愛小説『嵐が丘』をあえて選んで、読書感想文を書き上げ、先生を戸惑わせたそうです。(結果的に最優秀賞をもらったとか:笑)

 

超水族館ナイトではおなじみのこの光景、
中村さんとテリーPのかけあいでトークが始まる

前半トーク始まる

 

中村さん
「あとさ、君、ソーメン二郎としてそうめんを広める活動をしているやん? 必ず『そうめん美味しいよ!』『こんな食べ方も美味しいよ!』というところから始めるよね? いきなり そうめんの歴史とか、作り方とか、栄養学的なこととか、そんな細かい話をしても誰もついて来ない!」

テリーP
「はい、僕もやっていてそれに気づきました。」

水族館が今 「理科離れを起こさせないように」と言って一生懸命に行っている展示は、まさに そうめんに例えるなら、歴史や製麺技術、栄養学に相当するもの。即ち、学校の教科書に載っているような(時には専門書を調べてやっと辿りつけるような)生物学の細かい知識をいきなり教えようとするもので、「それではダメだ」と中村さん。

確かに、水族館に行くと、水槽の脇に 「見た目の似ている魚同士の見分け方(生物分類学)」であったり、「△△科の魚は全世界に▲▲種類いて、そのうち◇◇大陸には◆◆種類いる」 といったような、一部の専門家以外は誰も知らないような学術的な解説が掲示されているのをしばしば見かけます。

中村さん
「この魚とこの魚は非常に似ているけど実は種類が違うんですよ! … なんて、そんなコトはどうでもええやん! 食べて美味しかったらそれでええやんか? そっちの方が大事やろ! 魚の名前や種類とか細かい話をされてもそれについてくるのは将来さかなクンになるようなごく一部の人だけです!」

もちろん、それら学術的な記述の中には、自然科学が好きな人の心に響くトリビアも1つ2つ含まれているかもしれません。しかし、そもそも自然科学自体に関心の低い人には、全くもってどうでも良い情報ばかりとも言えます。同様に、近年流行りの体験学習おいても、教科書や図鑑に載っているような細かな知識を一方的に押し付けているケースが多く、これではせっかく生き物に触れられる貴重な機会も、苦痛で眠たいだけの場になってしまいます。確かに、中村さんが指摘するように、水族館が行っている理科教育(展示・体験学習)は実際に逆効果になっているかもしれません。

 

「ヘタクソな理科教育が余計に理科離れさせている!」
今回も攻め&攻めトークで鋭く斬り込む中村さん
いきなりの中村節!

 


 

2.入口は 『好き』 で良い。科学する心をいかに育てるか。

ところで、最近増えてきたという ”アンチ中村元” な人達は、いったい中村さんのどこがそんなに気に入らないのでしょう?

中村さん
「『中村元は美しい水塊だの、大人の癒しだの、好奇心だの、そんなことばかりを優先して、水族館の本分である理科教育や科学教育をないがしろにしている。だからけしからん奴だ!』ってね。」

そんな彼らは冒頭で紹介した 「カワウソゥ選挙」 についても非常に否定的で、「生き物を可愛いさや綺麗さ、或いは珍しさで判断するのはもってのほかだ!」と主張しているのだそうです。

中村さん
「確かに、彼らが言うように飼育係や学芸員は生き物を見た目で判断してはダメです。でもさ、普通のお客さんは好きは好きで良いと思いませんか? もちろん可愛くない生き物を殺せみたいなことを言い出したらそれは絶対アカンけど、入口は『好き!』『可愛い!』で良いと思うんです!」

水族館に通い詰めているカワウソファンの中には新人の飼育員にはなかなか難しい個体識別をいとも簡単にやってのける人もいるそうで、

テリーP
「なるほど。可愛いから始まって、結果として飼育員や学芸員を超ちゃっている部分もあるんですね!」

中村さん
「そう、時に学芸員を超えとるね。 もう一つ例を挙げると、水族館で写真ばっかり撮っている人っておるやん?」

テリーP
「ああ、水族館ブロガー的な人たちですね。ちょうどこのへんにいる。」

客席:「このへん!!(笑)」

 

水族館ブロガー的な皆さま
この辺の人たち

 

中村さん
「 ”このへん” の人たちは、水族館に行くと水槽の前でデッカイ一眼カメラを構えてジーッと何時間もシャッターチャンスを狙い続ける。水族館側からしたらちょっと邪魔で迷惑な人達かもしれん(笑)。でも、考えてみてくだい。水族館で良い写真を撮ろうと思ったら、どれだけその生き物を観察して理解をしなくちゃならないか?  彼らはもの凄く被写体となる生き物のことを観察しているんです! だから生半可な専門家よりも実はその生き物のことを詳しく知っていたりすることもあるんです!」

水族館で生き物を好きになったり、好奇心を持ったりして、その人なりの発見をしてもらうこと! それが何よりも大事なことだと中村さんは繰り返します。入口は「何これ!?」「可愛い!」「キレイ!」「おもしろい!」「珍しい!」で全く構わないとのこと。むしろ、そうあるべきであって、その感動や好奇心をキッカケに、そこから先は自分の心が求めるままに水族館や生き物たちと関わっていけば良いとのことでした。

テリーP
「なるほど。そして、その中からさかなクンみたいな人が生まれるんですね?」

中村さん
「うん、まぁ、生まれるかもしれないし、生まれないかもしれないし、人それぞれやな!」

そう、人それぞれ。自然科学の分野に限らず、カワウソ作家さん達のようにアート分野で活躍する人が現れても良いし、「魚って美味しい!」に始まって料理人の道を歩む人が現れても良い…。少なくとも「科学だ」「理科だ」とお題目を繰り返し、無機質に生物学の知識を押し付けるような展示や体験学習では、そのスタート地点に立つキッカケすら与えることができない。だから中村さんは「現状の水族館の理科教育はヘタクソだ」と言っているのでした。