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水族館プロデューサー・中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2017秋 〜科学離れと水族館の理科教育〜(vol.28)』 ライブレポート(17.10/15開催)

2018年02月13日

■ ”湖の生き物と人との関りが見える” 水族館

 

琵琶湖博物館が立派な水族館であることが分かったところで、第一部のテーマトークを踏まえて、さらに琵琶湖博物館・水族展示室の展示を見ていきます。

中村さん
「第一部では 『水族館には魚の名前だの分類学だのを教えることよりも、もっと大事な役割がある』 というお話をしました。琵琶湖博物館はそれを非常によくやってくれている水族館なんです! 」

琵琶湖博物館のテーマは 『湖と人間』 。自然科学系博物館と人文系博物館の双方の内容を併せ持つ、博物館法で言うところの 総合博物館 に当たる施設ですが、特徴的なのは全て展示において ”湖と人間の生活の関わり合い” と表現していること。A展示室は「湖の400万年と私たち」、B展示室は「湖の2万年と私たち」、C展示室は「琵琶湖のいまと私たち」といったように、湖と共に生きてきた人間の生活に焦点を当てた展示が行われています。水族展示室も然り。

例えば、「下流域の魚たちと簗漁」のコーナー。琵琶湖に流れ込む川の下流域で行われているヤナ漁を再現しています。

 

水槽内にかっとりヤナが設置されている展示内にヤナがある

 

※ヤナ(簗)とは
春から夏にかけて琵琶湖に流れ込む川の下流域に設置される定置漁具。川を遡上してくるアユなどを獲る伝統的な漁法で、特に琵琶湖周辺では川幅いっぱい扇形に簀(す)を張って、堰き止めを行う形状の「かっとりヤナ」が多くみらる。

 

金尾さん
「このスライドの写真は初夏の風景になっていますね。実はこの展示には仕掛けがあって、背景の襖みたいなもの(バックスリーン)を裏返すと秋の風景に、全部取り払うと冬の風景が現れるようになっています。そして、水槽に放す魚も、漁の様子も、その季節に合わせて変えています。ヤナ漁は夏までなので、今は秋ということでヤナは撤去して、アユやビワマスが遡上して卵を産むシーンが目の前で見られるようになっています。」

中村さん
「これってすごい情報やん!? 見ただけで魚を捕る仕掛けだと分かって、どういう仕組みで捕れるんだろうという気持ちになるよね? 知的好奇心を持つんです。そして、すぐ横に『これは昔からある漁法で… 』と書いてあったら 『へぇ~、昔の人は良く考えたなぁ』とドンドン好奇心が広がっていく。これこそが ”科学する心” や!」

金尾さん
「僕もキッカケとして 『なぜ?』 『どうしては?』 はとても大事だと思っていて、単純に魚だけ見せれば良いというワケではないと考えています。」

 

琵琶湖博物館の展示はなぜ優れているのか?
中村さん、金尾さんが分かりやすく伝えてくれた

興味深くも軽妙なトークが続く

 

さらに裏話として、

金尾さん
「本当は小さな子供はこの水槽の中に入って手掴みで魚を捕ってOKとしたかったんです。素手で採捕れるもんなら捕ってみろ!と(笑)」

中村さん
「魚を素手で捕るのってもの凄く難しいよね。普通はまず捕れない。でも、僕が子供の頃は学校で2クラスに1人ぐらいは魚を捕るのが上手な子がいた。その子は魚のことをとてもよく知っていた。」

金尾さん
「魚を捕れる子は目の前に見えている魚は狙いませんよね。岩の下とか、魚が潜んでいそうな場所に手を入れて、そこから追い込んで捕ったり…」

きっと川遊びで魚を捕ろうと何度もトライしていく中で、その魚の動きや習性を理解したということなのでしょう。

テリーP
「でも今の子供たちは川に入って魚を捕る機会なんてないですからねぇ… 」

金尾さん
「はい。だからそれをさせてあげたかったんです。そして、展示の横に魚名板のところに 『川で遊ぶ子供たち(絶滅危惧種)』 と書きたかった(笑)」

客席:(笑&拍手)

残念ながらこの構想はNGとなってしまったそうですが、もしも実現していたら  ”科学する心” がフル稼働するような最高の体験型展示になっていたかもしれません。

中村さん
「あっ、じゃあ、それならこのアイデア、竹島水族館でパクったらええんちゃう?」

客席:(笑)

たけすいの小林龍二館長殿、師匠が何か言っておりますが…!?

 

琵琶湖畔の様子を再現した水槽。
もんどりよ呼ばれる漁具や桟橋などの人工物が見える。
つまり、水槽に人間の生活も一緒に描き出している。
水槽の中に桟橋やもんどりなどの人工物

 


 

■ 水族館に魚屋さん!?

 

琵琶湖博物館の展示からもう一つ紹介。

中村さんが絶賛している展示がコチラ( ↓ )です。

 

魚屋さん…!?
魚屋さん

 

展示タイトルは「湖魚とともにある暮らし」。水族館の中に、昔、琵琶湖周辺に沢山あったという湖魚を取り扱う魚屋さんを店構えから丸ごと再現しています。

 

お店の名前は「魚滋」。…ん? 滋?
魚滋

 

中村さん
「君さぁ、自分の名前(滋史)を店の名前にしたたやろ!?」

金尾さん
「いやいや、滋賀県の ”滋” ですってば…! 」

客席:(笑)

ちなみに店先には身長を3cmサバ読んだという魚屋さんの店長に扮した金尾さんの ”おおよそ等身大パネル” も設置されています。

 

実際の売り場も精巧なレプリカで再現
(並んでいる魚も季節に合わせて変わる)
湖魚販売を再現

 

水槽の展示で生きている魚(と漁具)を見て

→ 最後にこの魚屋さんが現れる

これによって 「湖があって、そこに注ぎ込む川があって、そのおかげで人間は生きている。全て繋がっているんだということが、とてもよく分かる展示となった」 と中村さん。

金尾さん
「親子連れや、小さなお子さんが祖父母ととも来館した時に、この魚屋さんの前に来ると 『そうそう、昔はこんなお店が沢山あってね…』 とか、 『この魚も食べられるんだよ』 とか、語ってくれたりもするんです。」

それは素晴らしい!

この他、湖魚の料理サンプルも展示。鮒ずしのニオイ(限りなく本物に寄せた合成香料)を体験できるコーナーも設置されています。

 

鮒ずしの紹介コーナー
(鮒ずしのニオイ体験マシーン併設)
鮒ずしのにおいマシーン

 

琵琶湖博物館の展示は 解説なんて読まなくとも、展示を一目見ただけで「湖と人間の結びつき」を理解することでき、魚を捕ること~食べることを含めて、水中世界や生物への好奇心を持たせてくれるように作られています。中村さんが超水族館ナイトで何度も語ってきた「水族館の社会的役割」と具現化している水族館と言えるでしょう。