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【 イベントレポート 】

水族館プロデューサー・中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2018春 ~伝えるということ~(vol.29)』 ライブレポート(18.02/18開催)

2018年05月31日

2.中村元式プレゼン術!?

 

中村さん
「パワポでさぁ、文字や図が浮き出たりスライドしたりするやん? あれが良いプレゼンのやり方だと思い込んでいる人がすごく多いのよね。でも、聞いている3分の1の人は寝ているよ? 」

確かに私が勤めている会社でも、会議が PowerPointの機能の使いこなし合戦 の場と化したケースを何度か見ています(苦笑)。中村さんはツールを使うこと自体を否定しているわけではないのですが、そこに時間をかけるよりも前に、もっと大事なことがあって、そこを一生懸命に考えなければ、いつまで経っても相手に伝えたいことが伝わらないと指摘します。では、中村さんはどのようにプレゼンを行っているのでしょうか? 水族館の展示プロデュースに先立って、その水族館に呼ばれてプレゼンを行った …というケースを想定して、 ”中村元式プレゼン術” を少しだけ披露してくれました。

 

中村さんがプレゼンする時に
最も重視していることは?

中村元流プレゼン術とは?

 

中村さん
「僕が水族館でプレゼンする時は、まず最初に相手の水族館の悪口を思いつく限り言い放ちます。それこそ敵を作るぐらいの勢いでね。その後で 『でも、お客さんを増やす方法はありますけどね(ニヤリ)』と。」

もちろん悪口と言っても水族館プロデューサーの目で見た時に、事実としてダメなところを的確に指摘しているのであって、例えば、旧サンシャイン水族館(サンシャイン国際水族館)の時は、

中村さん
「お宅は水族館ではなく動物園になっていると言いました。事前に撮った水の殆どない館内写真を沢山見せながら 『水族館としてこれはあり得ない!』 と。」

当時のサンシャインの目玉はコアリクイのタエちゃんでした。

中村さん
「動物園になっているからライバルは上野動物園です。上野にはオオアリクイがいます。もうこの時点で負けとるやないか!って。 『だけど、ちゃんと水族館になれれば勝てるんですよ!』 とね。」

ビルの高層階にあるサンシャイン水族館は使用できる水量に厳しい制限があり、水のない水族館になってしまうのはある意味、仕方のないことでした。中村さんもそれは百も承知。でも、それを敢えて指摘することで自分たちが抱えている弱点・弱味をきちんと認識させることが出発点。その上で、

中村さん
「水が少ししか使えないなら、その水を多く見せることを考えましょう!と。」

テリーP
「出た!中村マジック!」

中村
「その当時はまだ中村マジックなんてなかったんだけどね(笑)。でも 『そういう方向性で私なら考えられます! 道筋を示せます!』  ということを伝えたんです!」

細かい方法論を語る必要は全くないそうで、そもそも30分程度のプレゼンで語り切れる方法ならもうとっくにやっているはず。それではどうにもならない深刻な状況だからこそ中村さんに声がかかっているのであり、相手側の水族館が知りたいのは 「この人に任せて大丈夫かどうか?」 という一点に尽きます。

中村さん
「だから僕が一番最初に伝えなくちゃならないのは 『中村元、凄いんだぜ!』 ってことよ(ドヤ顔)」

客席(笑&拍手)

中村さん
「そのためには 『お前の弱点知ってるぜ!』 と言ってしまうのが一番早い。そこに『それでも勝てる方法も知っているけどね!』 と続ける。結局、それが相手の一番聞きたいことやん?」

一番伝えたいことは何か? 相手が伝えてほしいと待っていることは何か? これらをできる限りシンプルなメッセージとしてまとめる。事前にこれをしっかり考えておくことで、結果は大きく好転するそうです。

 


 

3.そして、理解すること!

 

先ほど水族館の解説板は全く読まれていないと書きましたが、実は近年、非常に読まれている解説板があります。それは竹島水族館などが積極的に行っている 手書きの解説 。楽しく読めて生物のことがほっこりと好きになると好評の手書きの解説板ですが 「ウケを狙ったり、ふざけているから面白いのではナイ! そこを勘違いしてはイケナイ!」 と中村さん。

テリーP
「どういうことですか?」

中村さん
「手書きだろうと図鑑にある説明を書き写したようなものは絶対に読んでもらえません。『不恰好なほどハサミが大きいなぁ』とか、『挟まれたらメッチャ痛かった』とか、飼育スタッフ自身がその生き物について理解したことや、自ら体験したことを伝えてくれているから面白いんです!」

竹島水族館では、飼育スタッフが生き物を親しい友人のごとく紹介している手書きの解説カンバン「魚歴書」が大人気。難しいことは全く書かれておらず、飼育スタッフが『魚っておもしろいよ! ほら、この魚はね…』と自分の言葉でシンプルかつダイレクトに伝えてくれています。(ちなみに竹島水族館の「魚歴書」は先日書籍化されました)

 

へんなおさかな
竹島水族館の「魚歴書」(あさ出版)
へんなおさかな

 

竹島水族館の飼育スタッフの手書きによる
「魚歴書」。今まで魚に興味のなかった人でも
好奇心を揺さぶられるものとなっている。
魚歴書

 

人にものを伝える時、伝えようとしているものをどれだけ理解しているかが非常に大事」 と中村さん。本人が理解していないものを他人に伝えられるワケもなく、ごく当たり前の話なのですが、でも意外とそれができていない。中村さんが ”伝えることの天才” と称している人物がいます。それはジャパネットたかたの創業者で、2015年1月まで同社の社長を務めていた高田明氏。独特の大きな身ぶりと甲高い声も然ることながら 、

中村さん
「彼は商品のことをすごく理解している。メーカーは 『世界最速!』とか『毎秒〇〇回!』 とかスペックを訴えて 『凄い製品でしょ?』 言ってくるのだけれど、その機能が何のためにあって、その数字にどんな意味があるのかを全く語っていないんです。高田氏はその意味をきちんと理解した上で、『だからこんなことができますよ!』 とCMの視聴者に使い方の提案をしてくれる。それを見た人は 『そんな素敵な商品が世に埋もれていたのか!』ぐらいの気持ちになるワケです。いやいや、埋もれてへん。量販店に行けば普通に売場に並んでいます(笑)」

でもそう思わせるのは高田氏が ”理解” したことを分かりやすく伝えているから。

中村さん
「彼の凄いところは商品の理解に加えて、そのCMを見ている一般大衆がどんなことに興味を持っていて、どんなこと知らないのかまで、きちんと理解していることや!」

テリーP
「なるほど。当然、メッセージは太くなりますね!」

伝えるものを理解すること、さらに一歩進んで 伝える相手を理解すること がまず何より大事。それができた後に、理解したものを ”どう伝えるか” を一生懸命に考える。すると、おのずと ”伝え方” も決まってくるそうです。中村さんはよく画家の話をしてくれるのですが、

中村さん
「筆づかい等の見た目の技法が優れた人が立派な絵描きではないんです。筆づかいが上手くても、描く線が美しくても、作品から何も伝わってこなかったら意味がないんです。絵の対象物をどれだけ理解しているかが最も重要で、その理解したことを見る人々にしっかりと伝えられるのが優れた画家です。その伝え方こそが本当の意味での技法と呼べるもの。例えばピカソの絵や!」

ピカソが描く対象の「人物」を理解し、それを1枚の絵に表現するにはどうしたら良いかを考えた結果、複数の視点(心理的側面も含んで)から捉えた対象を1つの画面に収めるキュビズムの発明へと至りました。

中村さん
「水族館の展示も同じなんです。展示する対象物をどれだけ理解できているか大事! 伝えたいことが『サメってデカイ!』『口開けると怖い!』だったら、その大きさや怖さが見える展示にしなければアカンよね。」