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【 イベントレポート 】

水族館プロデューサー中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2018夏 〜ラッコの道標〜(vol.30) 』ライブレポート(18.06/17開催)

2018年09月25日

水族館で生き物を見るということ

テリーP
「僕も小学生の時に『わくわく動物ランド』でラッコを見て、親に頼み込んで鳥羽水族館に連れて行ってもらいました。でも、それは中村さんの仕掛けにまんまと乗せられていたということですね。危険だ、この人…。」

客席:(笑)

テリーP
「でも、生でラッコを見ることができて嬉しかったのを覚えてます。友達に自慢しましたよ。『ラッコ見てきた!』って。」

中村さん
「いや、君ね、多分ラッコは殆ど見ていないと思うよ。」

テリーP
「…かもしれないですね。ラッコブームでもの凄いお客さんの数でしたから。人の隙間から遠目にほんの一瞬チラッとだった気がします。でも『わくわく動物ランド』で色々見ていたから、それを撮影している現場に行ってきたというだけで嬉しくて、凄く見た気分になっていました。」

中村さん
「うん。でもその本物がそこにいて一瞬でも見えたという体験が凄く大事なのよ。」

中村さんが野生生物を見て初めて「凄い!」と感動した瞬間があるそうです。それは子供の頃に犬を散歩していた時のこと。犬が突然ワンワンって吠えて「何を吠えているのだろう?」と犬の視線の先にめをやると、山道の中に野ウサギが佇んでいました。…と、次の瞬間、

中村さん
「結構遠いところにおったウサギなんやけど、一瞬こちらをチラッと見たんです。その次の瞬間に2回ビョーン!ビョーン!と飛んで逃げてさ、もうおらへんかった! だけどその一瞬見えたウサギの表情とか毛並みとか、すごく頭の中に残っとるんです。いや、残っとるわけないと思うんやけど、残っている気がするんです! それぐらいの衝撃でした。『うわああ!ウサギって凄いっ!!』って思いました。」

「動物を映像で見るのとリアルで見るのとでは全然違う」と語る中村さん。まず、映像では大きさが伝わらない。ラッコを初めて見た人の殆どは 「うわっ!大きい!」 と驚きの声を上げるそうです。ラッコのぬいぐるみなどを見てカワウソやイタチぐらいのサイズを想像する人が多かったのでしょう。それが水族館で見たらあの大きさです。私も初めてラッコを見たときは大きさに驚いた記憶があります。

そして、何より自分のその目で生きた生物を見ることが大事。結局、映像やテキストでどれだけラッコ情報を武装したところで、仮にほんの一瞬であっても目の前で見たリアルなラッコには敵いません。百聞は一見に如かず。特に水族館の生き物は動物園に比べてはるかに行動展示の要素が強く、自然の中のリアルな ”生き様” を体感できる場所と言えます。

 

中村さんのトークに聞き入る
ラッコトークに聞き入る

 

ラッコブームが教えてくれたこと

テリーP
「今、水族館ってラッコは結構いるもんなんですか。」

中村さん
「それが減ったんや。一番多い時で 122頭 もいたんやけど、今は日本に 10頭 しかおらん。その10頭も高齢化していて繁殖が難しくなっている。ラッコは今、水族館における完全な絶滅危惧種になってます。122頭もいたのを日本の水族館が全部殺しちゃったと言いう人もおるかも分からんけど、皆ちゃんと天寿は全うしてるんです。赤ちゃんも沢山生まれました。」

でも、ラッコの繁殖が難しいのはそこからで、2世までは誕生しても3世が出なかった。結果、飼育個体数が急激に減ってしまいました。このまま行けばそう遠くない未来に日本の水族館からラッコは姿を消してしまうことでしょう。

中村さん
「残念ながら今はそういう状況なんやけど、でもラッコブームのおかげで、すごくできたことがあったなぁと僕は思ってます! 」

ラッコは地球上で最も密度が高い体毛を持った動物。それを知ったハンターや毛皮商人たちに乱獲され、一時絶滅寸前まで追い詰められた悲しい過去があります。

中村さん
「ラッコという言葉はもともとはアイヌ語なんやけど、人々は生きた動物の姿としてではなく毛皮になった状態でしかラッコを知らなかったんです。そしてその毛皮が流通しなくなった時点でラッコという言葉自体がは完全に死語になっていました。ラッコブームは、人間の経済活動がラッコという動物を絶滅寸前まで殺してしまったことを思い出させてくれました。二度とこんなことしては駄目だと思ってくれた人は沢山いたと思うんです。それまでは誰もラッコを『命』として考えていなかった。そりゃそうやん? 毛皮になった状態でしか普通の人は見る機会がなかったのだから。どれが一番美しく温かいかという性能の勝負になってしまう。でも、そのラッコが水族館で見たらなんか可愛いワケです。これっとても大事なことだと思います。」

 

日本の水族館から消えゆくラッコ。
彼らが私たちに教えてくれたこととは?
テリーP&中村さん

 

入口は可愛いで良い

ラッコのようにその生き物のことを知ってもらう最初のキッカケは「カワイイでOK!」と中村さん。

中村さん
「ところが、野生動物原理主義というか生物学原理主義みたいな考えで以て大衆文化を括ろうとしている人たちがあまりにも多すぎて、ちょっと僕、辟易してるんです。近年、特にその傾向が強くなっている気がします。動物をカワイイとかキモイとか言ったらアカンみたいな主張をする人が増えているんです。」

ここ数年はカワウソが大人気で、昨年から全国の水族館&動物園のカワウソ達によるカワイイ頂上決戦 『カワウソゥ選挙』 なる人気投票も始まりました。また、上野動物園ではジャイアントパンダの赤ちゃん 「シャンシャン」 の誕生を機にパンダブームが再来しています。その他にも様々な生き物が話題となり、カルカルにも出歴のある日本を代表する動物学者・今泉忠明先生の 「ざんねんな生き物事典」 はベストセラーとなっています。しかし、それに反発するかのように、

中村さん
「一部の水族館・動物園関係者 が 『生き物を可愛さで順位付けするな!』 とか 『見た目で評価してはいけない!』 とか言い出しました。確かに飼育員や学芸員はそうあるべきかもしれない。でも一般のお客さんはカワイイものは『カワイイ』でええやん? 醜いから殺せとかだったらそれはアカンけど、カワイイから好きの何がアカン? 『カワイイ!』から始まってその動物に興味を持ってくれたならそれでええやんか!?」

例えば、サンシャイン水族館には雨の日も風の日もカワウソに会いに通い続ける常連客がいるそうで、

中村さん
「毎日カワウソに会いに水族館に来て、ず~~っとカワウソを見ている。飼育員よりも遥かにカワウソを見ている時間が長いんです。だからカワウソのことを凄く良く知ってくれています。これは水族館としても非常に有難いことのはずなんです。」

動物園・水族館関係者の中には「飼育している生物に名前すら付けてはいけない」とまで主張する人もいるのだとか。もともと野生下では名前なんてないのだからそのままにおくべきだ…と。

中村さん
「いや、野生から檻の中に連れてきているんだから名前ぐらい付けてやってと俺は思うんやけどね。彼らが名前付けたらアカンという理由は 『動物に人格を勝手に想定してまうから』 だと言うのね。要するに ”擬人化” したらアカンという言ってるんです。」

テリーP
「なるほど。太郎ちゃんと名前を付けたら太郎ちゃんになってしまうワケですね?」

中村さん
「うん。確かに動物を人間の価値観で考えてはいけないというのは理に適ってます。でも、動物を使って何かを伝えようとした時、お客さんの興味を展示に惹きつけるためには、擬人化すること可愛らしさを魅せることも必要だと僕は考えます。そうでなければ生きている野生生物を閉じ込める意味がない。動物園や水族館は必要ないとさえ思うんです。擬人化ってすごく大事やと思う。擬人化しないとその生き物の気持ちになれないです。擬人化することでその動物に気持ちが入るんだったら絶対にその方が良い。人格を感じないから人は動物を平気で殺せるようにもなってしまうんです。」

私たちが普段食べている肉・魚だってもともとは生きていた命。私たちスーパーに並んだパック詰めの状態しか見ていないので、ややもすると「命をいただいている」ことすら殆ど意識していないかもしれない。でも私たちの気づかないところで、養鶏・養豚・養牛の農家さん、そして食肉加工業者さんは命を大切に育て、奪って(頂いて)出荷しているワケです。

中村さん
「僕らはそれを他人の手に委ねているから想像つかないけど、ツライ仕事だと思うよ。」

テリーP
「気持ち入りますよねぇ…。」

中村さん
「(動物原理主義者は)水族館にいる動物は野生生物として見なくちゃいけないんと言うのだけれど、そっちにも気持ちを持ちましょうよ…と。それができるのが水族館なんじゃないかなぁと僕は思うんです。」

中村さんが 「動物を擬人化して考えてもいいんだ!」 と気づいたのは第二部のゲストは岡野薫子先生との運命の出会いがキッカケだったそうです。

中村さん
「動物園や水族館で『動物が人と同じような思考するという嘘を教えるな!」と主張する人がいるんやけど、そんなんやったら動物文学はみんなあかんってことやろ? でも、動物文学が教えてくれること、動物文学から学ぶことは沢山ありますよね?」

第二部ではいよいよ岡野先生が登壇。さて、動物を主人公にした物語に込められた想いとは…?

 

中村さんの撮ったラッコ写真の続き。
手前のラッコが後ろのラッコに
頭を殴られているように見える(笑)。
これだけで見る人の心にストーリーが生まれる。
ラッコ写真5

 

コチラの写真はよく見ると…
ラッコ写真(銀色ラッコのなみだ)

 

リアル「銀色ラッコのなみだ」!
銀色ラッコのなみだ(拡大)