緊急リアルイベント開催!『第7回ソ連ナイト~ソビエト・ロシアのお酒事情 新情報追加その他!』ライブレポート(20.06/21開催)
2020年07月21日
■ 酒がないなら○○を飲めばいい!?
さて、ここからがカルカル史上最もバズッたプレゼンの核心部分。お酒が買えない、サマゴンも作れない。それでもソ連の酒飲みたちは決して諦めません。
アルコール成分を含む●●を飲めばお酒の代わりになるじゃないか!!
ちばさんから当時の人たちが飲んだとされる衝撃の代用品の数々を紹介してくれました。
<工業用アルコール>
ちばさん
「工業用アルコールはウォッカと同じぐらいの人気が高く、最も不味く最もアルコール度数が高いため ”本物の漢のための飲み物” と呼ばれていました。アルコールとケロシンとアセトンとインクを混ぜたような味だそうです。飲む前に火をつけて赤やオレンジの炎が青く変わったら飲んでも大丈夫とされていました。或いは卵黄を入れて振ると有害なアセトンとケロシンが沈むので、その上澄みを飲む!…等々」
チンギスさん
「これ、下手をすると失明しますから絶対は真似しないでくださいね!」
<オーデコロン>
ちばさん
「最も安く入手できたので人気ナンバーワンのアルコール飲料(!?)でした。中でもトリプルという商品が大人気。飲み方は1本そのままグイッと。多くは子供の頃に参加したピオネールキャンプで初めてその味を知ったそうです。」
横山店長
「チンギスさん、これって本当の話なんですか?」
チンギスさん
「私は飲んだことないですが、確かにキャンプで悪い先輩がみんなに家からオーデコロンを持ってこいと言って集めていましたね。」
横山店長
「じゃあ、本当にあったことなんですね!?」
ちばさん
「ウォッカ博物館にも飲み物として展示されていましたからね(笑)」
ウオッカ博物館に展示されている
オーデコロン。立派に ”お酒” 扱い。
この他、キュウリローション、サンザシチンキ、ポリッシュなどもお酒の代わりとして飲まれていた(…らしい)。
そして、極めつけは、
まさかの 殺虫剤 !!
(飲み過ぎたら…死!!)
接着剤 からもアルコール度数30%の
お酒を作っていたらしい!?
ちばさん
「接着剤はポリビニルブチラール樹脂系の接着剤が飲むのに適していたそうです。但し、大きな弱点がありまして、接着剤臭が相当にキツイらしいです。あと殺虫剤は一つ間違えたら生命の危険が…。」
横山店長
「そりゃそうだ(笑)。でも塩を入れてシェイクするとか作り方だけ見ると一瞬おいしそうに思ってしまいますけど…。」
そして最終手段は ”靴クリーム”!
ちばさん
「パンに塗ってしばらく置きます。パンがアルコール分を十分吸ったら食べてください。」
横山店長
「………!?(笑)」
これらは俄かに信じ難い話ですが、ソ連時代に地下出版でベストセラーになった小説『酔いどれ列車、モスクワ発ペトゥシキ』にも、常軌を逸したカクテルレシピが種々登場するそうです。
ロシア・アングラの最高傑作、
「酔いどれ列車、モスクワ発ペトゥシキ」
おそロシアなカクテルレシピが
いくつも登場する。
カクテル「雌犬のはらわた」のレシピ
(クリック or タップで少しだけ拡大)
さて、ソ連の反アルコール政策ですが、一部のアルコール中毒者が粗悪な密造酒や危険な代用品に手を出してさらに健康を害した人もケースも見られたものの、国全体で見れば健康や仕事の生産性の改善に良い影響が出たとされています。しかし、ソ連の社会や経済の立て直しには不十分で、飲むことくらいしか楽しみがなかった庶民の怒りを買う格好となり、ソ連は崩壊へ向かっていきました。お酒で国の宗教が決まり、お酒で国家の存亡が左右される。ロシアの歴史にお酒事情が多大な影響を与えていることに驚かされました。
【 現代ロシア人とお酒 ~その実情は!? 】
コロナ対策でいったん換気休憩を挟んで、まだまだ ちばさんのトークが続きます。
後半戦スタート!
現代のロシアのお酒に関する法律ですが、アルコール販売は日本同じく許可制で、販売可能なお店は酒屋・スーパー・個人商店・バー・レストラン…等々。但し、2010年から政府が本格的な減酒政策を推進中で、バーやレストランなどの飲食店を除き、夜11時以降~翌朝8時まで(自治体によって多少前後する)のアルコールの販売が禁止されているそうです。
…が、ここでも逞しいロシアの酒飲み達。販売時間外でも合法的にお酒を入手しようと、あれこれ頓智を利きかせます。
< 仲介業者現る >
ネットで顧客から注文を受けて(販売禁止時間でもお酒の購入が可能な)バーやレストランに出向きお酒をテイクアウトし、それを顧客の元に届ける。あくまで販売(転売)ではなく仲介という立場を貫いた。
< お酒のレンタル業者現る >
販売可能時間外にお酒売ったら違法。ならば「貸せばいい」という発想。
横山店長
「ちょっと何言っているのか分からないですけど…」
ちばさん
「注文を受けたらお酒を顧客の元にデリバリし、レンタル料とデポジットを受け取ります。お客さんは翌朝までにレンタルしたお酒を返さなければなりませんが、でも目の前にお酒があったら飲んでしまいますよね? 飲んでしまったら返却ができなくなります。同じ物を買って返せば良いのですが販売禁止時間だから買うことが出来ません。なら仕方がない!デポジットを諦めよう!…という仕組みです。(笑)」
さらにこんなサイトも発見!
ちばさん
「キーホルダーの通販サイトですね。注文するとすぐにキーホルダーを届けてくれますが、そのオマケにお酒が1本ついてきます。お酒はあくまでオマケです!販売しているのはキーホルダー!」
他、タクシーの運転手から買う
…なんて裏技も!?
ソ連時代のからのタクシー運転手はなぜかお酒を販売していたとか。
チンギスさん
「ソ連時代は闇市みたいなものがあって、タクシーの運転手はその運び屋や売人もしていたみたいです。」
今はUberをはじめ大きな会社がロシアのタクシー業界に参入しているのでこのような怪しいタクシーは殆ど見なくなったそうです。
■ ロシア国民=大酒飲み は今や間違った認識!?
さて、ここからはソ連崩壊後の世代を代表してナスチャさんの出番!
満を持してナスチャさんが
ロシアの ”真の姿” を伝える
ちばさんがここまでロシアの極端な大酒飲みを取り上げて面白おかしく紹介してきたので、「ロシア人はウォッカを浴びるように飲み、酔っぱいだらけ」というイメージをより強く持った方も多いのではないでしょうか? しかし、「昔はそうだったかもしれないけれど、今のロシア人は日本人の皆さんが持っているイメージとはだいぶ異なりますよ!」とナスチャさん。論より証拠! 国別のアルコール消費量ランキング(2018)を見てみましょう。
あれ?ロシアが上位にいない!?
まさかの51位!
ロシアの国民1人当たりのアルコール消費量は6.82リットル。反アルコール政策に社会的背景も加わって、ここ数年で急激に減っているそうです。なお日本は6.82リットルで63位。意外なことにロシアとさほど大きな差はありません。また、ロシア人のお酒の趣向もここにきて大きく変化しています。
種類別のアルコール消費率
1995年には81%がウォッカでしたが、2009年には52%、2014年には45%まで下がりビールが逆転してロシアで最も飲まれているお酒となっています。
チンギスさん
「ロシアでは近年、地ビール、クラフトビールがすごく流行ってますね。」
ナスチャさん
「もっと言えば若者は市販のお酒によりもオリジナルのお酒に興味を持つようになっています。」
ナスチャさんが紹介してくれた
ウラジオストクで大人気のBar。
決まったメニューがなくバーテンダーが
お客さんの好みやムードで
オリジナルのカクテルを作ってくれる。
もう一つのトレンドが 自家酒造。現在のロシアでは販売を行わなければ自宅でお酒を作ることは許可されているとのこと。ソ連の時代は粗悪な密造酒も多く出回りましたが、最近は作り方や道具も洗練されて、多くの家庭で趣味としてお酒造りが行われているそうです。
家庭でお酒を作る道具の専門店。
とてもオシャレな雰囲気。
ロシア人が大酒飲みだというのはもは古いや固定概念であり、現代ロシアの ”真の姿” も知っておく必要があるでしょう。
■ 節酒でロシアの未来はどうなる!?
ちばさん
「みなさん、さっきテストに出ますと言ったロシアのお酒を勧める言葉、覚えていますか?」
これです(↓)
「神様は三位一体がお好き」
これは「二度あることは三度ある」的な意味合い含む言葉なのだそうですが、ロシアにおけるお酒は社会の映し鏡であり、これまでの禁酒・節酒政策後には「ロシア革命」 、「ソ連崩壊」と国の命運を左右する大きな歴史的転機が訪れました。
ちばさん
「ロシアは今、減酒政策真っただ中。…ということは三度目の何か起こるかもしれませんよ!?」
二度あることは…!?!?
なるほど。ドキドキしてきました。
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