「あらゆるものをイベントに!」渋谷のイベントハウス型飲食店

【 イベントレポート 】

水族館プロデューサー中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2021春 〜ヒレアシ語を話せる素質〜(vol.38)』ライブレポート(21.02/27開催)

2021年05月28日

8.これが伊勢シー流! トレーニングの考え方

 

”柵なし展示” を可能としているのが、伊勢シーパラダイスならではトレーニングの考え方と技術の高さです。その最前線に立つ田村館長が独自のトレーニング論(のほんの一端)を語ってくれました。

例えば、アシカが芸をやらなかったり、トレーナーから離れてしまった場合、、、

芦刈さん
「なんで勝手に離れるんだ ⇒ 餌抜きだ!…というやり方をするトレーナーさんが多いと思うんですよね。」

中村さん
「そらそうよ。言うこと聞かないのに餌なんてあげられん。あげたら負けや。」

でも田村さんはアシカが言うことを聞かなかった場合でも ”餌をあげなさい” と後輩トレーナーたちに伝えているそうです。

田村さん
「僕は水族館の動物たちに何かをしてあげたくて飼育係になりました。だから彼らには餌をおいしく食べてもらいたい。言うこときいてくれないと一瞬カチンとは来ますよ(苦笑)。でも、動物にそうさせてしまったのもトレーナーなんです。僕は芸をする or しないも、トレーナーの傍にいる or いないも、動物たちにその選択肢を渡してあげたい。その上で動物たちの方から 『芸をやりたい』『トレーナーの傍にいたい』と思ってもらうためにはどうしたら良いかを一生懸命に考えますね。」

 

田村館長がトレーニング対する
基本的な考え方を語る

田村さんのトレーニング論とは

 

芦刈さん
「凄いなぁ…、凄いとしか言いようがない! みなさん聞きました? 世界中の水族館に沢山の飼育係やトレーナーがいるワケですけど、この考え方を20年以上前から実践していたのは、おそらく彼だけだと思うんです! 考え方のスケールが大きいんです!」

餌を抜くことで動物をコントロールできればその場はしのげるかもしれませんが、トレーナーとの信頼関係が崩れる可能性もあり「長期的な視点に立つと得策ではない」と田村館長。特に伊勢シーパラダイスは国道のすぐ近くまで海獣たちを連れ出すこと、また、何よりお客さんとの距離が近い(というかゼロ距離)ことから、一番避けたいのは動物がパニックを起こしてしまうこと。そこでトレーナーから離れて勝手に戻ってしまった場合でも 「とりあえず帰り道を覚えてくれた」、「いつでも好きなタイミングで戻ることができると分かれば動物にとって安心だろう」といったポジティブな要素に目を向けるようにしているそうです。

 

YouTube(伊勢シーパラダイス
公式チャンネル)の
動画の紹介も

伊勢シー王道

 

帰りたがらないトドの子供を
抱えて運ぶスタッフ(笑)
伊勢シー王道2

 

田村館長
「僕は1頭1頭その子の個性を引き出していきたいんですね。押しつけがましいトレーニングをしてロボチックになってしまうのが嫌なんです。もちろんトレーニングをしていく中でどうしても餌を抜かなきゃいけない場面も出てきます。だから絶対に抜くなとは言いませんし、僕も餌を抜いたことがあります。但し、餌を抜くようなトレーニングをしてしまった時は 『これではトレーナー失格なんだ』 という認識を持った上で改めて動物たちと向き合っていかないとダメだと思ってます。」

選択肢(つまり自由)を渡された伊勢シーパラダイスの動物たちは、結果として生き生き&としていノビノビとしていて、トレーナーとも心が通い合っています。

芦刈さん
「そう、伊勢シーの動物たちはみんなトレーナーのことが大好き! 動物たちの眼がトレーナーのことしか見ていないですもん!」

田村館長
「動物たちがトレーナーに集中してくれている間は、トレーナーは(お客さんに事故がないように)周りしっかり見ることができるんです。だから動物たちがトレーナーを選択してくれるように普段から心がけています。」

 


 

9.真似される伊勢シーの展示。でも、さらに ”その上” を行く!

 

アッカンベーアザラシも
伊勢シーが ”元祖” だ。
アッカンベーアザラシ

 

鳥羽水族館時代の中村さんは、すぐ隣近所の水族館で始まった ”柵なし展示” を初めて見た時、『やられた!』と思ったそうです。

中村さん
「そして(お客さんを奪われるから)二見のことは絶対メディアに言わんとこって思いました!」

客席:(笑)

中村さんが伊勢シーパラダイスの ”柵なし展示” を絶賛しているのは、ゼロ距離でふれあえることもさることながら、中村さんがフィールドでの調査で見てきたような感覚、即ち ”野生の生息地で海獣たちと会っているかのような雰囲気” が味わえるからだそうです。

中村さん
「伊勢シーの古い建物や広場といったロケーションは全然自然じゃないんやけど、広場に出ている動物たちのふるまいがすごく自然で、その雰囲気が野生のアシカやオットセイがいる海岸とすごく似ていたのね。僕は海外の調査で何度もそれを体験していたはずなのに『プールを泳がせておけばええやろ』程度の展示しか考えられなかった。すぐ隣でコレをやられてしまって正直悔しかったね…。」

 

白熱ヒレアシトーク!
客席も夢中です!

田村館長のトークに集中

 

水族館業界全体に強烈なインパクトを与えた伊勢シーパラダイスの ”柵なし展示” は、登場してまもなく後発の、特に大型の総合水族館(例えば、うみたまご、八景島ふれあいラグーン…など)に次々と真似をされました。

中村さん
「芦刈君も真似をしたよね? オレがいなくなった後の鳥羽水族館で。」

芦刈さん
「はい。これホントにゲスい話ですみません。伊勢シーが老舗の和菓子屋だとしたら、すぐ隣の総合デパート(鳥羽水族館)が同じような和菓子を見様見真似で作って売り始めたみたいな話ですからね…(苦笑)」

中村さん
「田村館長は当時どんなふうに思ってたの?」

芦刈さん
「あっ、それ聞きたい! 正直に言って!」

田村館長
「へぇ~そうなん…って思いました(笑)。芦刈さんも素晴らしいトレーナーなのでお手並み拝見というか…。」

中村さん
「本当は文句の一つや二つ言いたかったよねぇ?」

田村館長
「うーん…(苦笑)。でも今となっては鳥羽水族館さんがそこでセイウチを入れてくれたことが、後々のセイウチの展示のためには本当に良かったと思ってます。」

 

老舗和菓子屋 vs 総合デパート!?
田村館長と芦刈さん

 

実は中村さんもサンシャイン水族館のリニューアルを手掛けた際に、伊勢シーパラダイスの ”柵なし展示” のコンセプトを拝借していました。屋上マリンガーデンに客席との間に仕切りのないオープンステージを設け、そこでアシカのパフォーマンスを行うことに…。

中村さん
「当初、サンシャインのトレーナーさんたちに『それではちゃんとした芸ができない』と猛反対されました。でも『いや、これでいいんや! 伊勢に行って見てこい!』と言ってね。で、トレーナーさんたちが実際に伊勢まで見に行って『なるほど!よく分かりました!』と納得してくれたワケです。」

ショーをすることにこだわっていたアシカトレーナーさんの考え方をもガラリとも変えてしまう。それが伊勢シーパラダイスの展示の魅力でしょう。

 

他の園館に真似をされたのは
”柵なし展示” だけではない。
(カワウソの展示水槽に握手穴を
開けている場面を動画で紹介)

創意工夫で新しい展示を開発

 

カワウソとの握手コーナーが完成!
その愛らしさが大きな話題となり、
多くの動物園や水族館が追随した。
カワウソの握手が完成

 

全国の各地に水族館や動物園に色々と真似をされた格好の伊勢シーパラダイスですが、さらにその上を行くアイデアで新たな展示を現在進行形で創り続けています。何より一つ一つのクオリティが他の園館を圧倒しているとの声も。

芦刈さん
「そう、みんな伊勢シーの真似をする。でも、みんな伊勢シーのレベルを越えられないんです。そこが伊勢シーさんの凄さだと思います!」

ハードは古いけれどソフトは最先端。伊勢シー&田村館長のさらなる飛躍に期待です。

 

<next: 感動のエンディング~次開催予告 >