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【 イベントレポート 】

多田将 presents 「『兵器の科学1 ・弾道弾』出版記念イベント」ライブレポート(20.11/14開催)

2021年03月16日

弾道弾はどうやって前に進むのか?~第3章より

 

第3章は「推進方法」について。弾道弾の全行程のうち推進剤を噴射して加速する部分、いわばロケット推進工学の話です。

多田さん
「そもそもロケットはどうやって前に進んでいると思いますか? 自分の体の一部を後ろに捨てると、その時、運動量は保存されなければならない(運動量保存則)ので、その反動で前に進みます。実はこれだけのことなんです。だから、燃料をどれだけ捨てるか? どれぐらいの速さで捨てるか?大事なのはこの2点ということになります。」

これを数式化したのがロシアの物理学者・ツィオルコフスキー。

多田さん
「ツィオルコフスキーは大学を出ていないのですが、独学で、しかも19世紀にこの公式を考え出したというからとんでもない天才です。彼には不遇な時代もあったのですが、その辺りの話もちょこっと載せてありますので興味があれば読んでみてください。」

 

ロケットの推進原理と現した
ツィオルコフスキーの公式。
(クリック or タップで拡大)
ツィオルコフスキーの公式

 

弾道弾の構造
弾道弾の構造図

 

上の図面は “ぽんち絵” で十分のはずですが、多田さんはわざわざCADで正確な寸法で描き上げたそうです。なおモデルは史上最大の大陸間弾道弾 P(R)-36M2 とのこと。

 

液体燃料式の弾道弾と
固体燃料式の弾道弾の比較
液体燃料式と固体燃料式の比較

 

液体推進剤 を使ったものを ロケットエンジン固体推進剤 を使ったものを ロケットモーター と呼ぶそうで、それぞれの長所と短所が紹介されました。移動のしやすさや貯蔵性などの利点から現在は固体推進剤を使用が殆ど(唯一ロシアは併用)だそうで、周辺技術の進化もあって現在では大胆にも爆薬が推進剤として使われているそうです。

 

ロケットエンジンのカットモデル。
ノズルや燃焼室は非常に高温となるため
周囲に液体流路を設け、ここに
燃焼前の燃料(または酸化剤)を流すことで、
冷却を行い強度を保っている=再生冷却
(クリック or タップで拡大)

ロケットエンジンのカットモデル

 

釣鐘型のノズルは、スロート(管の断面積が最小になる部分)で絞られた後に末広がりとなっていますが、ベンチュリ効果(断面積を狭めて流速を増加させると圧力が低い部分が作り出せる現象)から考えると不思議に感じるかもしれません。

多田さん
「はい、それは亜音速までの話なんですね。マッハ1を超えるとノズルは広げた方が速度が大きくなるんです。その理由や計算方法もちゃんとこの本の附録に載せてあります!」

 

多田さんの神講義が続く。
ブラックな時事ネタをちょいちょい挟んで
笑い誘うことも忘れません(笑)

多田さんの神講義

 

ここでは割愛しますが、この他にも 誘導方法姿勢制御 などにも言及…。

 

補助ロケットによる
推力偏向の仕組みを解説する多田さん補助ロケットの写真

 

コロナ禍で色々制限はありましたが、
客席も非常に盛り上がっていました。
多田さんの講義に熱心に聞き入る

 


 

発射と再突入~第4章より

 

第4章は 「発射」 という最初の行程から始めて、「再突入」 という最後の行程で締めくくります。いわばこの本のクライマックスとも呼べる部分で興味を引かれるトピックスが盛り沢山。…が、当然全ては紹介できないので、気になったものをいくつかピックアップしてみました。

まずは 発射方式 について。サイロから、車輌から、鉄道から…と、様々な発射システムがある中で、潜水艦からの発射が面白い。発射可能な深度まで浮上し、耐圧蓋を開き、発射筒に充填したそのガス圧でコールドローンチを行い、水面に出てから点火を行って噴射・加速します。特にロシアの発射方式は非常に独特で、水上に打ち上げられて点火した後、いったん斜めに姿勢を変えてから再び姿勢変更して鉛直方向に上昇するという複雑な制御が行われています。

多田さん
「なぜそんなことをしているのかと言うと、万一点火しなかった場合、ロケット本体が潜水艦の上に落下してきて大変危険だからなんですね。潜水艦の上に落ちたという事例を私は知りませんが、点火せずに落下してサイロを破壊してしまった事故は実際に過去にあったようです。その教訓でしょうね。」

 

潜水艦からの弾道弾の発射
潜水艦からの発射

 

潜水艦から打ち上げ後、
直ちに姿勢を斜めにした後、
姿勢を戻して鉛直方向に上昇。
それがロシアンスタイル!
いったん姿勢を斜めに

 

こちらは鉄道を使った発射方式の紹介。
鉄道からの発射

 

さて、燃料が切れて加速が終わり楕円軌道に乗ったら、もうロケット部分は不要となるので ”弾頭” の切り離しが行われます。

多田さん
「弾頭は切り離された後に向きを変えることが出来ません。みんな頭から落ちてくると勝手に思っているでしょ? でもそれは何らかの力が働かない限り有り得ないことなんですね。つまり、切り離しの時にちゃんと再突入の向きとなっていなければならない。これをちゃんと説明している本って、僕のこの本ぐらいしかないと思います!(ドヤ顔2回目)」

 

弾頭切り離し時の向き注目!
弾頭の切り離し

 

さらに 分割弾頭 について。トータルの核出力は同じでも1発の弾頭を積むよりも複数の弾頭で散らして投射した方がサイロの破壊確率が上がり効率が良いことが計算で証明されています。

 

分割段による切り離しイメージ。
移動しながら少しずつ姿勢を変えて
弾頭を切り離していく。
(クリック or タップで拡大)

分割弾切り離しイメージ

 

なんとこの図( ↑ )もCADで描いているそうで、それぞれ10km離れた場所に落ちるような軌道を正確に描いたもの。パッと見では分からないところでもm多田さん、実は ”超” 頑張ってました(驚)。

 

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