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【 イベントレポート 】

多田将 presents 「『兵器の科学1 ・弾道弾』出版記念イベント」ライブレポート(20.11/14開催)

2021年03月16日

そして、いよいよ 再突入 ! 標的に向かって最終段階です。

ここで重要となるのが 弾道係数 と呼ばれるもの。数式は割愛しますが、簡単に言ってしまえば再突入体の形状が鋭いほど大きな値となります。例として、弾道係数が 10.000[kg/m^2 ] の場合と 1,000[kg/m^2] の場合を比較すると、高度100kmから時速7000[m/s]で再突入した時、前者が地面までの所要時間が33秒で最終速度が2.6[km/s] であるのに対し、後者は所要時間100秒で最終速度130[m/s] と大幅に減速。両者は全く異なる挙動を示します。

 

再突入体の速度の時間変化(モデル計算)。
弾道係数が小さいと
着弾までに大幅に減速してしまう。
再突入の計算

 

多田さん
「弾道弾は速くて迎撃できないと言われますけど、このグラフから分かるように再突入体のカタチが良くないと簡単に迎撃されてしまうんですね。」

高い弾道係数を保つには鋭い形状が保たれる必要がありますが、そのために大事なのは圧力も熱も最もかかる先端部分の保護・強化。例えば、三次元強化繊維複合材料で作られた非常に強靱な ノーズチップというモノが使われているとのことでした。

多田さん
「ノーズチップは縦繊維にタングステン素線を使って高温処理をしています。こんな情報トップシークレットだと思うでしょ? でもあるところを探せば載っているんです。それは… 特許 !」

客席:「おおっ…!」

多田さん
「特許を調べていくと貴重な情報と巡り合える場合があるんですね。戦車の装甲って謎だと思ってるでしょ? でも時に特許に載っていることもある。 みなさんも探してみてください!」

 

多田さんが U.S. patentで見つけた
ノーズチップの組成と構造。
(クリック or タップで拡大)

特許にお宝情報が!?

 


 

弾道弾防御を知ろう~第5章

 

第1巻の最終章にあたる第5章は「弾道弾防御」について。

多田さん
「この章が書けば書くほど長くなったんですね…。(苦笑)」

近年、ニュース等でミサイル防衛についての話題を耳にすることが増えましたが、この章を斜め読みするだけでその議論の内容が「ああ、そういうことなんだ!」と理解できるようになります。

弾道弾の行程は、打ち上げから燃料を燃焼させて加速し楕円軌道に入るまでの ブースト・フェーズ(3~5分)、そこから複数の弾頭を切り離していく ポストブースト・フェーズ(1~5分)、重力にひかれて楕円軌道を描く ミッドコース・フェーズ(約20分)、大気圏に再突入する ターミナルフェーズ(1分未満)に分かれていて、それぞれのフェーズで適した防御システムを考える必要があります。

 

弾道弾の行程。重力任せに楕円軌道を描く
ミッドコース・フェーズが大部分を占める。
(クリック or タップで拡大)
弾道弾の行程

 

敵国が発射した弾道弾を探知するシステムとしては、早期警戒衛星早期警戒レーダー が挙げられます。

 

早期警戒衛星の長楕円軌道について。
監視したいエリア上空は
遠点付近なのでゆっくり動き、
地球の裏側は近点付近なので速く動く。
早期警戒衛星

 

地上で弾道弾を検出する
早期警戒レーダーのリアル配置マップ。
北極を挟んで想定敵国と
対峙しているため
北に手厚いことが分かる。

早期警戒レーターの配置

 

本の予約特典でもこの注目を集めた 極超音速滑空体 の解説もこの第5章で取り扱われます。弾道弾の弾頭を滑空体にすることで単純な楕円軌道以外の軌道にすることができます。(水切り飛翔)

 

滑空体にかかる力。
進行方向に垂直上向きの揚力が加わる。
(クリック or タップで拡大)
滑空体の計算

 

射程2000kmでの滑空体のモデル計算
滑空体の計算例

 

多田さん
「中国の萊蕪市(火箭軍第822導弾旅)から射程2000km想定しました。そうしたらたまたまなのですが目標地点が新宿区市ヶ谷本村町5-1(防衛省市ヶ谷地区)になったんですね。たまたまですよ!」

客席:(苦笑)

さて、通常の 弾道弾 滑空体 では軌道が異なるので防御の仕方も変わってきます。弾道弾はPAC-3の防空領域では対応できないため迎撃にはTHAADまたはイージスシステムが必要です。一方で滑空体は最後の瞬間にPAC-3で迎撃が可能。

多田さん
「だから2種類の迎撃隊を持っていることが重要なんですね。PAC-3があるから他はいらんやろということにはならない。それぞれ得意な分野があるんですね。」

 

滑空体及び通常の弾道弾の
各高度での速度を計算したグラフに
PAC-3とTHAADの防空領域を重ねると…!?
(クリック or タップで拡大)着弾時の軌道と防空領域

 

PAC-3の射程に入ってから着弾まで
通常の弾道弾は僅か6秒しかなく
迎撃は非常に困難であると言える。
一方で滑空体はその倍の12秒。
これならギリギリ迎撃できる可能性も…!?
(クリック or タップで拡大)
滑空体の挙動

 

以上で今回の弾道弾が講義は終了。

多田さんから最後に ”お願い” が…。

多田さん
「以前、『ミリタリーテクノロジーの物理学<核兵器>』というライトな装丁の書籍を出した後にそれで殴ったら人を殺せるぐらいのゴツイ装丁の『核兵器』という本を出しました。それと同じように今回の『弾道弾』もいずれは重装版を出したいと思ってます!」

 

こんなふうに!
重装版計画

 

多田さん
「そのためにはこの本が売れてくれないとイケナイ。売れなかったらせっかく始まったこのシリーズも途中で打ち切りになってしまうかもしれないです。第6巻まで行けばみんなが大好きな戦車が出てきます!」

 

「だからみんな買ってください!
お友達にも是非オススメして!」

買ってください!

 

客席:(拍手)

 


 

まとめ

 

多田さんの新たなイベント『兵器の科学』シリーズの第1弾『弾道弾』の講義を本当に楽しく聞くことができました。学生時代は物理・化学・数学の授業は30分でも長く苦痛に感じた思い出がありますが、多田さんの授業だと2時間あっという間です。

多田さんはシリーズ全体の ”まえがき” の中で「決して『敵を圧倒する戦力を整備せよ』と言っているのではなく、どのような軍備を保持するかは国民が議論して決めること。その結果として多くの戦力を放棄してしまったとしてもそれは自分たちで決めたことなので仕方ありません。しかし、必要かどうかの議論をするためにはそれに対する知識がなくてはなりません。」と記しています。その意味では、多田さんのこのイベントは科学を楽しみながら色々な兵器の概要を知ることができる唯一無二の場と言えるでしょう。今後も出版に合わせて都度イベントが行われる模様。多田さんの話では第2弾の『生物化学兵器』、第3弾の『レーダーと電子戦』の原稿も着々と進んでいる様子。次の出版&イベントを楽しみに待ちたいと思います。

 

(文&写真:GAMA)

 


 

おしらせ

 

来たる2021年3月27日(土)、イカロス出版「九五式軽戦車写真集」 「九七式中戦車写真集」「日本の機関銃写真集」刊行記念として、カルカルにて『春の日本戦車まつり』が開催されます。イタリア軍研究者で日本の戦車研究者でもある吉川和篤氏の2年ぶりのトークイベント。ここに多田さんの出演が決定しています。二人のマシンガントークに期待MAXです! 興味のある方は是非!(下のバナー画像からイベント告知ページに飛べます)

 

春の戦車まつり!