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【 イベントレポート 】

【次回 10/17(日)よる】水族館プロデューサー中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト 2021 夏 vol.39 〜水族館の明日はどっちだ!〜』ライブレポート(21.06/17開催)

2021年10月09日

水族館がなくなるということ

ゴールデンウィーク明けの 5月12日、水族館ファンに衝撃のニュースが飛び込んできました。それは 「京急油壺マリンパークが 2021年9月30日 をもって営業を終了し閉館する」という一報。

京急油壺マリンパークは 1968年開業の老舗水族館。当時 ”東洋一” と言われたドーナツ型の巨大回遊水槽を有し、相模湾に生息する魚をはじめ、ペンギン、アシカ、コツメカワウソなどを飼育展示。1981年に誕生した屋内型ショー劇場「ファンタジアム」で行われる照明・音響を駆使したミュージカル仕立てのイルカ・アシカショーは多くのファンを魅了してきました。”老舗水族館” と表しましたが、広い敷地を活かし新しい展示施設も増設・拡張されていて ”レトロだけれど常に新しい風も感じられる” 水族館でもありました。実は中村さんがリニューアルの基本構想と基本計画を手掛けていたそうで、青写真も出来上がり、いよいよ実現に動き出そうとしていた矢先の出来事でした。

 

2021年9月30日に53年の歴史に
幕を下ろした「京急油壺マリンパーク」。
地元密着型水族館として親しまれていただけに
閉館を惜しむ声も多い。
2021年9月で営業終了となる京急油壺マリンパーク
(写真は筆者が現地にて撮影)

 

中村さん
「今年(2021年)3月いっぱいでに志摩マリンランド(三重県志摩市)が閉館になったよね。実はあの時 『ひょっとしたら油壷も危ないかも!?』 と少しだけ思ったんです。志摩マリンランドは近鉄グループ、油壺マリンパークは京急グループ、どちらも電鉄系の水族館でロケーションも似たような感じだったからね。」

そして、その不安は現実のものに…。

かつて鉄道会社は路線誘客のために沢山のレジャー施設を作ってきました。しかし、レジャーの多様化という時代の流れもあり、近年閉鎖が相次いでいるのが実情です。そこに新型コロナウィルスの感染拡大が追い討ちをかけたカタチとなりました。

中村さん
「鉄道事業はホント厳しいよね。コロナによる自粛で電車で旅行する人が減って、テレワークの普及で電車通勤する人も減った。水族館はうまくやればコロナが終息して人流がOKとなった時にコロナ前の2倍のお客さんを呼べるかもしれない。でも定期券は絶対に2枚買ったりしないからね…。」

テリーP
「ですよねぇ。しかもコロナが終息してもテレワークの流れはある程度残りそうじゃないですか。そうなると鉄道会社はますます厳しい。」

中村さん
「まぁ、実は僕もコロナでオンライン会議が増えて 『交通費使わなくて済むからその分お金が貯まる。ラッキー! コロナが終わってもオンライン会議の流れだけ残ってくれたらいいなぁ』 なんて思っていた一人なんやけどね(苦笑)。そうしたらとんでもないことになった!」

2019年に刊行された『全館訪問取材・中村元の全国水族館ガイド125』には、そのタイトル通り水族館として全国125の施設が紹介されています。決して広くはない日本の国土にこれほど沢山の水族館がある。日本は世界一の水族館大国と言えるでしょう。ひょっとしたら「その中のたった1館2館が閉館しただけの話」「新しい水族館もどんどん誕生しているから大丈夫」と考える人もいるかもしれません。…が、

中村さん
「じゃあ、ここで志摩マリンランドの写真を見てみようか。『なんでこの水族館が終わってしまったんや!?』って、すごく残念な気持ちになると思うよ。」

志摩マリンランドは 1970年開業。伊勢志摩の観光拠点としての役割を全うし、2021年3月末を以って51年の歴史に幕を閉じました。志摩マリンランドの代名詞だったものがコチラ( ↓ )。

 

海女さんによる餌付けショー
志摩マリンランドの海女ショー

 

鳥羽・志摩地方は昔から海女漁が盛んな土地。志摩マリンランドでは本物の海女さんが素潜りで大回遊水槽を泳ぎ、魚に餌付けを行うショーが行われていました。

中村さん
「海女さんのショーは鳥羽のミキモト真珠島でも見られます。でもそれは海の上からの観覧するのね。水中の海女さんを毎日(※註2)見られるのは『志摩マリンランド』だけだったんです。』

  ※註2:全国の水族館では もぐらんぴあ(岩手県久慈市)でも
      海女の実演が行われているが土日祝日GWに限定される

志摩マリンランドで行われていた海女さんのショーで特筆すべき点は、今では見られなくなった伝統的な木綿の磯着にガラスとゴムの丸い磯眼鏡という昔ながらの海女さんのスタイルで実演していたこと。

中村さん
「海女漁の歴史や文化をライブな形で保存し展示していたんです。近年、文科省は水族館のような(博物館法に規定される)博物館施設は、単にその施設が持っているものを展示するだけではなく、地域の課題解決や地域振興にも活用しなさいと言っているのね。志摩マリンランドは地域の情報を発信し、海女さんという日本の漁業の歴史をちゃんと伝えてくれていて、尚且つそれが観光振興にも役に立っていたんです。」

つまり、水族館として非常に高い次元でインテリジェンスを発揮していたということ。

中村さん
「その水族館がなくなってしまった。これって我々にとって非常に大きな財産の損失だと思いませんか?」

志摩マリンランドは ”古代水族館” としての顔も持っていました。古代の志摩の海に生息していた生き物(アンモナイトなど)の化石と共に、「生きた化石」と呼ばれる原始的な形態を残した現存生物を展示。そういった個性も主張できていた水族館でした。閉館の理由はあくまで「施設の老朽化」であり、コロナの影響がどこまであったのかは計り知れませんが、水族館ファンとしては非常に残念な出来事となりました。

 

志摩マリンランドの古代館では
”生きた化石” として
オウムガイやカブトガニ、
古代魚などを展示していた。

志摩マリンランドのオウムガイ

 

 

コロナ禍の水族館の希望は ”飼育係”

中村さん
「そうそう、コロナ禍でどの水族館も大変な時やけど、そんな中でも『あっ、これはすごく頑張ってくれているなぁ!』と感じた取り組みがあったんです。去年(2020年)全国各地の全ての水族館が臨時休館となった時期があったやん? あの時、休館中の水族館がインターネット上で色々なことをやり始めたのね。」

水槽や展示施設の中にWebカメラを設置して、生き物の様子をライブ配信することは以前から行われていました。

中村さん
「でもアレってあんまり面白くないよね。いつ見ても動物が寝ていたり、動物がカメラから遠いところにいたら小さくしか見えない。単にダラダラ映像を流されても退屈なだけで満足できないんです。そうではなくて、このコロナ禍では飼育係が積極的に出てくるようになった! カメラの前で生き物の話をしたり、水族館のリアルな裏側を動画で見せてくれたりするようになった。これが今すごくウケているんです!」

前回(2021・春)にゲスト登壇した田村龍太さんが館長を務める伊勢シーパラダイスも ”飼育係だからこそ撮れる” 動画が人気で話題となっている水族館の一つです。

中村さん
「朝の調餌室の様子とかをカメラで撮ったりしていてね、そうしたらそこに幼い子どものアシカがオウッオウッって入ってきてたりするワケよ。見ていてメチャ面白い! すぐ近所に(大型総合水族館である)鳥羽水族館があるのにネットの世界では『トバスイに代わって伊勢シーという新しい面白い水族館ができたんかっ!?』ぐらいの勢いで伊勢シーの動画がバズっている。そして、それが今まで伊勢シーのことを全く知らなかった人のところにまで広がり届き始めているんです。」

このようにあの手この手で新たなファン層を開拓していける水族館は ”人流がOK” となった時に「コロナ前よりも沢山のお客さんを呼べる爆発力を秘めている」と中村さん。

テリーP
「なるほど。ただ耐えて待つんじゃなくて、良い準備期間にしていくんですね。」

 

全国一斉休館という最悪の状況の中でも
「希望の光を見た」と中村さん
展示係に奮起を促す中村さん

 

もちろん、いつ訪れるか分からないコロナの終息を待ってばかりもいられません。コロナ禍でもある程度のお客さんには来てもらわないと経営が立ち行かなくなってしまいます。

中村さん
「でもさ、今は『水族館に来てください!』とか、『イベントやります!』 『新しい展示始めます』みたいな宣伝が全くできないんよ。”密を作りに来てください” と言っているのと同じに捉えられてしまうからね。すっかり『密は悪!』みたいな風潮になっているやん?」

本来その水族館の魅力を発信するのは、営業・企画・広報スタッフの仕事です。しかし、現在は宣伝・広報活動になかなか動けない状況となっています。

中村さん
「そう! 結局のところ今、水族館の魅力を伝えていけるのは飼育係、まさに彼らなんです! どこの水族館も状況はすごく厳しいです。でも飼育係が立ち上がった水族館は終わりじゃない! むしろ伸びしろすらある! コロナ禍の水族館のおいては ”飼育係が展示の範囲” をいかに広げていけるか” が大事になってくるし、 ”広げていったところ勝ち” だと思うのね。」

そして、そのノウハウやアイデアは今まで集客に苦労してきた小・中規模の水族館が積極的に開発しているとのこと。元々限られたリソースで創意工夫を凝らして集客をしてきた素地があるため、コロナ禍でも新しい試みにどんどんトライできているようです。対して、規模の大きな水族館は思いの外、後手を踏んでいる様子。というのも、大きな水族館ほどスタッフの役割分担が明確化されていて、飼育係が飼育以外の職域に活動を広げていくのが難しくなっているのだそうです。

中村さん
「でも、その縛りを何とか乗り越えて飼育係さん達には頑張ってほしいと思います。そうしていかないと貴方達の居場所がなくなりますよ…と。 それと、水族館好きのみなさんは 『面白い取り組みをしているなぁ』と感じたら、それをいっぱい褒めてあげてください。良い反響があれば大きな水族館のスタッフたちもどんどん動きやすくなる!」

 

「君たちがぜひ立ち上がってほしい!」
と、飼育係にエールを送る中村さん
コロナ禍で水族館が始めたこととは?

 

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