大槻ケンヂ・デビュー20周年記念ト-クショ-!!
2008年10月01日
今回はライブレポというより個人的なコラムになっちゃいましたが、先日大槻さんのデビュー20周年のトークイベントをやりました。
お客さんは抽選で当選した方のみで、当選倍率も凄い事になってたので当選したお客さん達も嬉しそうです。
そんな抽選でも男女比が半々近くになるとこが素晴らしい。
ミュージシャンでもタレントでもアーティストでも誰でも、同性のファンが多い人というのはカッコイイと思います。
みんなに「20周年おめでと~~!!!」と祝福されながら大槻さんは登場し、「今夜はトークショーだから唄わない!」と最初に宣言しておきながら、「・・・やっぱり唄う!」といきなり言い出し、先輩後輩で互いがファンで交流の深い銀杏BOYZの名曲「ベイビーベイビー」のカラオケを唄いだしました。
銀杏BOYZ熱唱(しかもカラオケ)
MCは僕がやらせていただきました
20年を超簡単に振り返ると、
筋肉少女帯でデビュー→空前のバンドブームの中いきなり大ブレイク→タレント的な活動も増える→筋少脱退→バンド“特撮”結成→そして筋少再結成→今月12年振りの武道館公演という事になる。
ミュージシャン、作家、タレント・・・マルチに活動できる大槻さんだが、僕はやはり“ミュージシャン・大槻ケンヂ”が一番好きである。
そんなミュージシャン大槻ケンヂの魅力の1つに「歌詞のテーマの多さ」があると思う。
海外のロックの和訳を読むと、日本のロックには歌詞のテーマがビックリするくらい少ない事に気付く。
大昔から現在まで、「愛」だ「がんばれ」だ「夢をあきらめるな」だ、それしかない事にいつもあぜんとする。唄から理想を取ったら何も残らないが、しかしまず必要なのは「本物のリアリティ」「説得力」である。
そんな中で、大槻さんは世の中の何でもかんでもをテーマにし、それを歌詞にして見事にそれを全部成立させてしまう。
高木ブーや、カレーや、宗教や、企画モノAV女優や、パーマの失敗や、ナンパした女のコの親が自分と同じ歳だった事や・・・・。確実に「日本で最もどんなテーマでも歌詞にして成立させられるミュージシャン」なのだ。
そして、それがすべてコミックソングにならずに、ちゃんと「批評性」と「シニカル」さを持った「ロック」になってるとこが凄いのだ。
「がんばれ」「夢をあきらめないで」とリアリティのかけらもないアホな歌手に唄われるダメな曲を僕は今まで100万曲くらい聴かされてきたが、大槻さんのように「がんばったけどダメだったよ かなわない夢もあるんだね」という本当のリアリティを、のほほんとさらっと唄えた人を僕は大槻さん以外未だに知らない。
大好きな“デス市長”という曲の歌詞がある。そこでこのデス市長はマニフェストを語る。
「マリ○ァナを開放致します。 そのかわり徴兵制度を義務付けます」
「原発を廃止致します。 発電は市民の自転車こぎで行います」
「義務教育を廃止致します。 そのかわり丁稚奉公を義務付けます」
・・・そして最後にデス市長はこの究極の真実と言えるマニフェストで締めくくる。
「自由を勝ち取りたい市民は 何かを犠牲にしなければならないのです」
・・・・もう・・・「天才」としか言いようが無い。
そしてそんなすべての歌詞の根底に必ず「弱者へのやさしさ」があるのだ。
ダメ人間(※ちなみに“ダメ人間”という言葉は大槻さんが発案者)や、イジメられっコや、リストカッターのゴスロリ少女や、うだつの上がらない文化系の男女の恋愛や・・・。
♪友達はいないから痩せた子猫の絵を描く クラスのくだらない君達の中で僕は貝のようにだまった♪
♪香奈、君の頭僕がよくしてあげよう 香奈生きる事に君がおびえぬように♪
♪とにかくさオレは君が好きだから 空ぐらいは飛んだりもできるかもね♪
♪ホラごらん 天使を呼ぶための機械さ これで消せる 人の哀しみを 人の苦しみを♪
「センチメントでそして限りなくやさしい」。それが大槻ケンヂの詩人としての素晴らしさである。
イベントはホントは、エロ話やバンドブーム話や笑える話やアブナイ話や書きたい事がいっぱいあったが、結局絶対書けない話しかなかったのでした。でも書けないと言う事はそれだけイベント現場は楽しかったって事でもあります。
最後は名曲“ロコ思うままに”を熱唱。
相変わらずカッコイイぜ、アニキ。
(東京カルチャーカルチャー店長・シンスケ横山)