ブクブク交換 vol.17 ライブレポート: 「秋を感じる本」「芸術/アートな本」「あなたが一番好きな作家の本」を交換しよう!(11.9/14開催)
2011年09月19日
季節は読書の秋。
テーマに沿ったお気に入りの本を持ち寄ってプレゼンしあい、
気になる本をお互い交換し合うイベント
「ブクブク交換」が今回もカルカルで開催されました。
いつもはステージイベントがメインのカルカルですが、
今回は客席のテーブルを組み合わせ
より親密な距離で本を紹介しあえる工夫が施されました。
今回のテーマは
「秋を感じる本」「芸術/アートな本」「あなたが一番好きな作家の本」。
さまざまな視点で選ばれた魅力的な本たちを、さまざまな人たちが
自分の思いを込めて熱く紹介しました。
生物学を専門とするフリーライターの女性が紹介したのは、
クモが巣に掛ける網の標本を集めた、「クモの網」。
クモの巣にラッカーを吹きつけて着色して撮影。芸術作品のよう。
レイ・ブラッドベリ「華氏451度」。
本を持つことが禁じられた世界に生きながら本を手にしてしまった
「焚書官」の姿を描くSFの名著です。
いまの情報化社会には驚くほどリアルすぎる一冊。
調剤薬局で働く女性が紹介するのは、恩田陸の「ドミノ」。
東京駅を行き交う人にスポットを当てた群像劇。
登場人物への「劇中インタビュー」も。
「ナンシー関の記憶スケッチアカデミー」。
雑誌「通販生活」での彼女の連載をまとめた本。
おぼろげな記憶だけをたよりに書かれたイラストが並びます。
どう見てもそう見えないイラストに無理やり補足が書いてあったり(笑)
宮沢賢治「新編 銀河鉄道の夜」。
リンドウなど秋の花が出てくるので持ってきました、と女性。
「東日本大震災のあと、ふたたび話題に上がった。
悲しい話ですが、とても美しい文章で綴られています。」
ブクブク交換主催のテリー植田さんが持ってきた「美墓」。
お墓メーカーの作った墓デザインカタログ!
企業の社長の建てた”豪邸墓”など故人の個性バクハツな一冊でした。
某大手書店勤務の男性が持ってきた、「恋する春画」。
とかく淫靡なイメージのつく春画ですが、江戸時代には
女性も男性も笑いながら見るような漫画のひとつだったそう。
性におおらかだった時代の、いち娯楽としての春画にせまります。
続いては、都築響一の「夜露死苦現代詩」。
エロサイトのバナーのコピー、暴走族の特攻服の刺繍など
普段ならスルーされる場所に宿る「文章」にスポットを当てた一冊です。
神は細部に宿る…とはかの人の名言ですね。
会社員の男性が持ってきたのは「即席麺カタログ」。
即席麺と使用されている具材、CM映像まで網羅したカタログ本。
思わず手が伸びてしまうそうな逸品ですが、残念ながら現在は絶版。
がんばって古本屋さんを探しましょう…!
小泉武夫「不味い!」。
発酵学の権威が出くわした、「マズいもの」ルポ。
匂いが漂ってきそうな語彙が秀逸です。
「ヘビ臭い料理」って、いったい…?
耐震設計が専門という建築士の男性が持ってきたのは
「オイラーの贈物」。
足し算など簡単な解説からはじまり、オイラーの定理の解説に。
「半分も読めば大学の数学は理解できます」
ライターの女性が持ってきた、北村薫「冬のオペラ」。
北村薫に心酔するあまり「あなたの作品に入りたい」とファンレターを書き、
早稲田大学で北村薫同好会を作ったのだそう。
北村先生の直筆サイン。
自作の小説を送ったら、「もっと書いて!」とノートが贈られてきたのだそう。
本の向こう側に垣間見える人間模様も、ブクブク交換の醍醐味です。
ブクブク交換初参加という女性が持ってきた、京極夏彦「狂骨の夢」。
その分厚さで知られる京極本ですが、
「最近は分冊化されたものもありますが、慣れれば3時間ほどで読めてしまうので
ぜひ分厚い一冊で読んで欲しい。」、と女性。
常連の女性が持ってきた、森見登美彦「恋文の技術」。
片思いの相手に一方的な思いを抱く大学生の綴る手紙で構成された、
いわば感情移入型ファンタジー小説。
「これを選んだのは、私がすごく文通したいからなんです」と、
自身の文通エピソードを次々と披露する女性。
こうして本から広がる「脱線エピソード」がまた、面白いのでした。
プレゼンが終わり、恒例の交換タイム。
自分の本を手にとった相手に、話したりなかった本の魅力を
ぶつけ合う参加者のみなさん。
こうして、秋の夜長の素敵な宴は過ぎていくのでした。
(ライター・天谷窓大)