好き勝手なモノ作りで知られるおバカなクリエイター三組が夢の共演!『ザリガニワークス presents おバカ創作研究所 Vol.1』ライブレポート(12.03/18開催)
2012年05月05日
『おバカ創作研究所』がついに始動!
好き勝手なモノ作りで知られるおバカクリエイター
ザリガニワークス、現代美術二等兵、乙幡啓子の3組が
カルカルに集結し、奇跡のおバカ競演!
おバカを究め、おバカを独自の文化へと昇華させる!
作っているものはおバカでも仕上がりはどこまでもハイクオリティ!
決しておバカには真似できない”おバカ創作”。
三者三様の「どうかしている創作」の魅力をお台場から発信!
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【クリエイター紹介】
[サリガニワークスさん]
武笠太郎さんと坂本嘉種さんによるマルチクリエイティブ会社。
「コレジャナイロボ」や「自爆ボタン」「土下座ストラップ」など、
玩具の企画開発、デザインを軸にしながら、
キャラクターデザイン、作詞作曲、ストーリー執筆等々、
ジャンルにとらわれずに「なんでもやります!」という姿勢で
様々な”おバカコンテンツ”の制作を展開している。
[現代美術二等兵さん]
京都市立芸術大学彫刻専攻の同級生、
ふじわらかつひとさんと籠谷シェーンさんによるユニット。
サラリーマンをしながら創作活動を続けている。
ユニットと言っても作品はそれぞれが創作し、
展覧会時に持ち寄るソロ二人組方式での活動を展開。
[乙幡啓子さん]
カルカルではすっかりおなじみのデイリーポータルZライター。
制作手法的にもネタ的にも破壊力のある作品を作り続けている。
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【1.作品紹介】
自己紹介を兼ねて、まずは、
それぞれの作品や日々の活動内容の紹介から!
1)乙幡さんの作品紹介
乙幡さんはデイリーポータルZにおいて
初期の頃から記事を書き続けているが、その過程で、
乙幡さん曰く
「様々な工作にトライして作り散らかす記事が増えてきた!」
では、それらの作品を紹介しよう。
マグロの解体ショーをやってみたかったが、
マグロは非常に高価なので、ぬいぐるみで作ってみたと言う。
これならいつでも気軽に解体ショーを楽しめる。
「サーモグラフィーセーター」
テレビ番組等で温泉に入った後などに良く見る
サーモグラフィーによる体温分布をセーターに編み込んだら
温かく見えるのではないかという発想で作られた作品。
毛糸の値段をケチってアクリルの毛糸を使ったので
見た目に反して実は全然温かくないらしい。
「CR乙幡啓子」
最近は幾分減ってきた印象だが、2~3年前は
テレビをつければパチンコの宣伝という時期があった。
アニメキャラクターやタレントが次々とパチンコ台に…。
乙幡さんはそんなパチンコのCMを見るたびに
「なんでもパチンコにすんな!」と憤っていたらしいのだが、
ある時、「これがもし自分のパチンコ台だったら?」と考えてみたら、
急にパチンコのCMが待ち遠しくなってしまったという。
…で、実際にそれを作ってしまったというから凄い!
アンパンマンパチンコをオークションで落札し、
バックスクリーンを乙幡さん自身の写真に差し替えて実現!
乙幡さん
「一生のうちに一度は自分のCRを!楽しいですよ!」
”黒ひげ危機一髪”を改造して作成したもの。
中央に卵子があり、その周りにあるのが精子。
その精子を卵子のスリットに刺し込んで”当たる”と
赤ちゃんの人形がポーンと飛び出す。
果たして、この子は望まれた子なのか、それとも…。
天井にタライといえば「罰ゲーム」的な印象を受ける。
その頭上にあると非常に不安なタライを照明器具にする試み。
意外にも柔らかく温かみのある光になるらしい。
乙幡さんはこれらの工作を「妄想工作」と名づけ
デイリーポータルZで、その制作過程を記事にしてきた。
そして、昨年、雑貨の企画・製作を行う「妄想工作所」を立ち上げた。
『妄想工作所』の取り扱い商品をいくつか紹介しよう。
乙幡ブランドの代表作ともいえるのがこのエコバッグ。
しかし、反響の割には思ったほど売れていないらしい。
「一人ではなんとなく持ちにくい」、「若い世代には通じにくい」など
いくつか原因があるのだろうが…。
セミがゼンマイでジージー鳴るだけという単機能すぎる玩具。
”ゼンマイ”のついた”セミ”が”鳴る”ことから
「ゼンマイゼミナール」という名前を思いついたらしいが
しばらく経って「いや、それはダメだろう」と我に返り、
とりあえずは「ゼンマイゼミ(仮)」名という商品名に落ち着いたらしい。
どちらも缶バッジとバッグを組み合わせた商品。
スぺース・バッグは太陽系の軌道が描かれており
そこに缶バッジの惑星を配置していく。
その日の気分で地動説を唱えたり天動説を唱えたりできる。
グランドクロスも自由自在だ。
アリ・バッグはアリの巣の絵が描かれていて
そこに缶バッジの女王アリや働きアリ、餌場などを配置していく。
エコバッグはアイデア次第で様々なネタ商品が生まれそう。
今後の展開に期待したい。
出版の記念のイベントもカルカルで開催され盛況だった。
先日、第1刷が完売したとのこと。拍手!!(増刷絶賛未定)
2)現代美術二等兵さんの作品紹介
大学の同級生だったお二人。ある時、
お菓子に駄菓子があるように
美術にも駄美術があっていいのでは?
…と、はたと気づいて、
”駄美術”という言葉の下に創作活動を始める。
今年で20周年を迎えるというから凄い…!
こけしアレーはその名の通り”見た目がこけし”の鉄アレイ。
現代美術さんにとっては”出世作”ともいえる代表的な作品。
バーチャルスイミングはラジコンの車を分解して
半分に割ったマネキンの顔の下に仕込むことで
床を人が泳いでいるかのように見せるというモノだ。
C-C-TRAIN
ネーミングセンスが秀逸すぎる。(笑)
ふじわらさん
「僕らは8割ネーミング勝負です!」
本物の手羽先で型を取って作ったという力作。
手羽先はスーパーで調達したらしいが、スーパーでは
キレイにパック詰めにするために右だけを並べていたりするので
左右両方の手羽先を揃えるのに地味に苦労したらしい。
作品はおバカでもクオリティは高く!
妥協を許さずにおバカを究める姿勢が実に素晴らしい。
直江兼続の”愛兜”のハリウッドVer。
カマドウマラスカルはアライグマラスカルと
「なんとなく語呂が似ている」と言うことで作ってみたとか。。
毒々しい色彩がなんとも不気味だ。
ミロのヴィーナスの両腕が別パーツになっているというネタ。
「ちょっと誰か…」
羽化しようとしているセミの幼虫の背中がチャックになっている。
乙幡さんが「ネーミングセンスがイイ!」とタイトルを絶賛していた。
「よっちゃんイルカ」
某反捕鯨団体の標的にされかねない問題作!?
ちなみに英語表記は「TERIYAKI dolphine」。(笑)
そんなこんなで、このような作品ばかり作っていると
当然、次のような批判(↓)も来たりする…。
そんなクレーマーさんには、開き直って
「美術じゃない!駄美術だ!!」
と、切り返しているとのこと。
才能の無駄遣いと言われようと、
美大出身のお二人がここまで真剣におバカに取り組んで
20年も作品を作り続けているのは凄いことだと思う。
「13日の金太郎」
3)ザリガニワークスさんの作品紹介
ザリガニワークスさんは有限会社なので
作品というより商品と言った方が適切な場合もあるかもしれない。
ザリガニワークスさんの代表作はなんといっても
コレジャナイロボ…!!
/*— ザリガニワークスさんのプレゼン資料より —*/
「欲しかったのはコレじゃなーい!!」
プレゼントを開けた子供から発せられる悲痛な叫び。
楽しかったはずのクリスマスが突如、修羅場に。
こんな経験ありますか?できれば避けたいものです。
しかし、人生欲しい物が何のリスクもなしに手に入るなんて話は
そうはありません。欲しい物を手に入れる為には努力も必要だという事を
何かの機会に知っておくのも良いでしょう。
「コレジャナイロボ」はその絶妙な偽物感、カッコ悪さにより、
その事をお子様にトラウマ級の効果を持ってお伝えすることでしょう。
情操玩具として是非お使いください。
/*—————————————–*/
ザリガニワークスさんの「コレジャナイロボ」は
まさかの「グッドデザイン賞」も受賞している。
子供をガッカリさせるという機能に対して
デザインがきちんとアプローチされていると世に認められたのだ。
大事な書類をこの「最高機密封筒」に入れて持ち歩けば、
極秘任務を抱えているような
緊張感を持って仕事に当たることができる(かもしれない)。
業者さんとの打ち合わせの時に、この封筒に資料を入れて行くと
相手方に社運をかけているように思わせる効果もある(かもしれない)。
簡単に言えば「水に溶ける紙」。
敵に追い詰められ、最高機密書類を見られるぐらいなら
いっそのこと破棄した方がいいという状況に追い込まれた場合に
この紙で作成した書類なら水に投げ入れることで
最高機密を暴かれずに守ることができる。
なんでもEメールで送れる時代になったが
「挑戦状」を送るときなどはやはり巻物が良いだろう。
140円切手を貼れば定型外として郵送が可能。
ボタンを押しても何も起こらない単なる飾りものであるが、
両面テープで壁などに取り付けることで
部屋に緊張感を与えるインテリアアクセサリーとなる。
さて、ザリガニワークスさんが手掛けたもので
最近、最もよく目にするのがおそらくコレ(↓)だろう。
やはり業者との打ち合わせの時にさりげなく机の上に携帯を置いて
土下座ストラップを相手側に向けると
相手方に何らかの心理的な影響を与えられるかもしれない。
土下座ストラップがかなりヒットしたので
「なかなか次に行けなかった(坂本さん談)」らしいが
満を持して新しい商品が4月下旬ぐらいに発売されるらしい。
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【2.クロストーク&物販紹介】
自己紹介&作品紹介が終わるとクロストークへ!
…と、その前に!
最初に乾杯をするのを忘れていたとのことで、、、
クロストークの話題の中心は…乙幡さん???
ザリガニワークスさんも現代美術二等兵さんも美術大学の出身だが、
乙幡さんは美術とは全く関係のない分野の出身。
デイリーポータルZでおバカ工作の記事を書く中で、
数々の失敗をも繰り返しながら、徐々に腕を磨いていったという
クリエイターとしては異色の経歴の持ち主だ。
武笠さん
「モノ作りをしている人は普通は事前に、
”これはできる!” ”これできない!”を見極める能力があるが、
乙幡さんにはそういうのが全くないんですよねぇ~。」
乙幡さん
「何でも思いつきで作っちゃうんですよ…。
大風呂敷を広げたまま畳めずに締め切りが来て
そのまま記事書いて、布団にもぐって寝ちゃう(苦笑)」
美術系の人はモノを作る際に自分の得意な手法で実現しようとするが、
美術関係をバックグラウンドに持たない乙幡さんの場合は
まさに”何でもあり”なアプローチで創作に着手する。
ザリガニワークスさんや現代美術二等兵さんから見ると
その無鉄砲さがある意味、新鮮で衝撃的なモノであるらしい。
さて、モノ作りをしている3組が集まったとなれば
必然的に充実するのが物販コーナーだ。
物販コーナー
並んでいた商品をいくつか紹介しみよう。
「コレジャナイロボ(左:通常版、右:無彩色版)」 by ザリガニワークス
無彩色ヴァージョンはイベント限定品。
武笠さん
「限定品の方がペンキ塗らなくていいから作るのが楽という…。(笑)」
「現実逃避枕」(左:ポジティブVer、右:ネガティブVer) by 現代美術二等兵
ポジティブに逃げるか?それとも、ネガティブに逃げるか?
ハシビロコウ、カモノハシ、ミツユビナマケモノ…。
ホッケース(ホッケ型ペンケース) by 乙幡啓子(妄想工作所)
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【宿題発表】
3組は事前にそれぞれお題を出し合っており、
その”おバカ創作アイデア”を持ち寄って発表していく。
お皿の上には何を飾ってもよい。
試しに餃子を飾ってみた実施例
(後ろで餃子が臭いと仰け反る乙幡さん:笑)
乙幡さんは「マンホール盆栽」
(参考記事:マンホール盆栽のすすめ)
風で飛ばされてきた種子によって、
マンホール表面に雑草が生えて緑色になっていることがあるが、
その趣ある光景を盆栽に採り入れたもの。
マンホールはPEに黒のラテックス塗料を塗って作成したらしい。
(マンホールを工作で作る人って本当に珍しい…)
練り消しゴムを様々な形にして台の上に飾ったシンプルなモノ。
しかし、これがなかなか味わい深い芸術性を感じさせてくれるのだ。
武笠さん
「これが3mぐらいの大きさだったら箱根彫刻の森にあっても
全然不思議はないくらいのクオリティですよ!」
確かに。(笑)
練り盆、お手軽アートとして皆さん、いかがですか?
フラフープダイエットは動作が単調で、なかなか長続きしない。
そこでモチベーションを高め維持させるために
フラフープの中に生クリームと塩を格納できるようにする。
フララフープを回すことでおいしいバターができるので
「よし!頑張ろう!」というモチベーションUPにつながるという。
(そのバターを食べてしまったら逆に太るのでは…?)
上位機種として馬乳酒ができるという
「モチベーションUPフラフープ・アドバンス」もあるらしい。
パソコン作業ばかりしていると運動不足になりがち。
そこでボーリングの球を使ったトラックボールを作成してみたという。
これを使えばパソコンをしながら筋力トレーニングが可能だ。
光学マウスを組み込んで制作しているので、
実際にちゃんと動くガジェットになっている。
ちなみに「SISYPHUS」とはギリシア神話で
山頂まで押し上げるたびに転げ落ちてしまう石を
繰り返し山頂に押し上げるよう運命づけられた
「SISYPHUS」という人物の名前から採っている。
作ったものはおバカでも
「作っている人はバカじゃないんだぞ!」をアピール。(笑)
文房具の場合どんなふざけたもので学校に持っていける。
おバカ文房具でクラスの人気者になろう!
個人的にこの日一番「欲しい!」と思ったのがコレ。
絡みつくダイオウイカという着眼点が良い。
会社の事務机とかに置いておきたい。(是非、製品化を!)
実用性ゼロどころか逆に散らかるという…。(笑)
でも、こういった常識的には絶対に商品化されようがないモノを
どんどん世に出してほしいと思う。
授業中、睡魔に襲われた時は速やかにフリスクを投入!
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【まとめ】
ひと言で「おバカ創作」と言っても
ザリガニワークスさん、現代美術二等兵さん、乙幡さん、
それぞれに「おバカ」に対する筋の通し方みたいなものがあり、
それが作品にきちんと反映されているのが素晴らしい。
おバカ創作研究所は三者三様のハイクオリティな「おバカ作品」を
まとめて観賞できる非常に楽しいイベントとなっていた。
早くも”第2回”が決定しているらしい。(8月末)
おバカ創作研究所がこれから生み出していくであろう
「珠玉のおバカ作品」に大いに期待したい。
(ライター・GAMA)