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【 イベントレポート 】

水族館プロデューサー中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2016夏~遺伝子は発情する!~』ライブレポート(16.6/19開催)

2016年09月01日

【前半の部】

1)浦島が乗った亀は♂か♀か?

ドラマ「水族館ガール」の第1話にこんな話が出てきました。

”浦島太郎を竜宮城に連れて行った亀はオスかメスか?”

これは中村さんが35年ぐらい前に考えたネタだそうです。

当時、鳥羽水族館の新米スタッフだった中村さんは団体客の案内係を務めていました。ウミガメが泳ぐ水槽の前に団体客が辿りつくと上司に指示された通りに次のような解説を行います。「みなさんウミガメにはどんな種類がいるか知っていますか?ウミガメにはアオウミガメとアカウミガメとタイマイの3種類がいます…(略)」。

しかし、誰もその話を聞いてくれず…。それもそのはず。中村さんがこの超水族館ナイトで何度も語っているように、殆どのお客さんは水中感や浮遊感に心癒されたり、水の清涼感を味わったり、海の中の世界を楽しむために水族館に来ているのであって、何も個別の生き物の種類や名前を知るため来ているのではないからです。

ある日、大阪からの団体客が来た時の事。中村さんがマニュアル通りにウミガメの解説を始めると、一人のオバちゃんがそれを遮るように「兄ちゃん、そんな話はええから浦島太郎が乗ったカメはどれや!」と言い放ったそうです。その団体客はオバちゃんツッコミに「わははは!」とひと笑いすると、「ほな次、行こか!」と次の水槽へ歩いて行ってしまいました。これで火が付いた中村さん、「絶対に話を聞かせてやる!」とウミガメ問題を考え始めました。

まず、浦島太郎伝説が残る本州に上陸するカメを調べるとアカウミガメただ1種類であることが分かります。そして、ウミガメが上陸するのは産卵をする時のみ。つまり、浦島太郎が乗ったのはアカウミガメメスということになります。

そして、いよいよリベンジの時。中村さんは大阪からの団体客に「浦島太郎を乗せた亀はオスだと思いますか?メスだと思いますか?」と質問を投げかけます。そして、正解を伝えた上で更に「ではこの水槽どれがオスでどれがメスだと思いますか?」と続けます。最後に種明かし。「実は尻尾のを見ればオスとメスが分かります。オスは尻尾の中にペニスが入っているので尻尾が立派なんです!」。

中村さん
「ここまで来ると大阪のオバちゃん達は大ウケ!どれやどれやと尻尾が大きそうなカメを探し始めて、あとから来たお客さんに『知っとるか?浦島太郎が乗った亀はメスなんやて!しかもオスはたいそう立派らしいんよ』とオチまで付けて伝えてくれてな…。(笑)」

テリーP
「カメの種類の話には何一つは興味を示さなかったのに。急に凄いですねぇ。」

中村さん
「そう!突然に知的好奇心が湧いて『今日は水族館で面白い話を聞いたなぁ!』と思って帰ってくれる。こんなふうに水族館においてオスとメスの話って面白いし、凄く大事だと思うんです!」

22年前、中村さん4冊目の著書「遺伝子は発情する」
遺伝子は発情する

本のイラストを担当したのは内田春菊さん
春菊さんがイラストを担当

2)スナメリの出産シーンが保健体育の教材に!?

鳥羽水族館では企画室長から副館長までを歴任した中村さん。あの手この手で全国から沢山のお客さんを鳥羽に呼び寄せるなど仕掛人として高い手腕を発揮しました。その集客手法の一つが水族館でしか撮れない興味深い映像を記録してそれをテレビ・新聞・雑誌などのメディアに紹介してもらうというもの。そして、ある日、もの凄い映像が撮れたという。それはスナメリの出産シーン

中村さん
「スナメリの母親の体から生まれてきて臍の緒がピーンと伸びてバチッと切れる。そして、生まれた仔が泳ぎだすという凄く印象的なシーンでした。」

早速、その映像を各メディアに拡散すると大反響があり全国から沢山のお客さんが鳥羽水族館に来館。BBCなどでもその映像が流され、鳥羽水族館の名は世界に響き渡りました。そこにある思いがけない反響があったそうです。

中村さん
「三重県の教育委員会がスナメリの出産シーンを保健体育の授業に使わせて欲しいと言ってきたんです。」

テリーP
「確かに学校の授業で人間の出産シーンをそのまま見せるのは難しいですし、かといって図やイラストじゃ伝わりにくいですし、確かにこれ以上ない生きた教材なんじゃないですか?」

中村さん
「そう!人間って色々なことに興味を持つときに自分たちに照らし合わせると理解しやすいんだけど、性教育の場合、それが生身の人間だとイヤラシイ話やドギツイ話になってしまう。でも、動物だと抵抗なくカラッと面白い話として聞いて持ってもらえる。」

教育委員会からの申し出を快諾したところ、しばらく経って、ある教育熱心な先生から更にリクエストの手紙が届いたそうです。今度は「(スナメリの)交尾の映像はありませんか?」というもの。確かに交尾から出産までの流れがあってこそ生命の誕生が成り立つもの。それらをセットで教材にしたいというのはごく自然な考えかもしれません。中村さんはもちろん快諾して、映像を提供したそうです。

中村さん
「まぁ、でも先生も生徒さんもビックリしたやろうなぁ!イルカのアレは細くて、こんなに長くて、ムチみたいにビューっと出てきてシュルルっと入るんや!(笑)」


イルカのアレを身振り手振りで表現する中村さん(笑)

イルカのアレ

水族館は科学的なことや学術的なことばかりを羅列する博物館になってはいけないと常々語っている中村さん。動物の種類や名前といった無味乾燥な知識を教えるよりも、もっと人が豊かに生きていくための”気づき”や”教養”を与える場であるべきだと繰り返します。

中村さん
「水族館では生き物を飼っています。生き物を飼っているということは交尾から出産までの繁殖に関わる一連の作業を目の当たりにできる貴重な場所なんです。それを見て”分かること”の方が、
生き物の細かい名前を知ることよりも遥かに有意義なことだと思いませんか?」