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【 イベントレポート 】

水族館プロデューサー中村元 presents 『中村元の超水族館ナイト2016夏~遺伝子は発情する!~』ライブレポート(16.6/19開催)

2016年09月01日

3)遺伝子に突き動かされる(!?)じゅんいち

5年ほど前に亡くなってしまったのですが、鳥羽水族館には「じゅんいち」というオスのジュゴンがいました。1頭だけで飼育されていたじゅんいちでしたが、ある日、じゅんいちのお嫁さん候補に、フィリピンからセレナというメスのジュゴンがやってきました。…が、セレナはまだ体の小さな少女だったので当面は壁で隔てられた別々のプールで飼育されることになりました。しかし、隣にメスがいることを本能で察知したじゅんいちはソワソワと落ち着きません。

さて、セレナが成長して、いよいよじゅんいちとセレナを一緒のプールへ。すると途端にじゅんいちは超発情モードに突入!猛り狂ってセレナを追い回しては執拗に抱きつきます。じゅんいちにしつこく追い回されたセレナはじゅんいちがすっかり嫌いになってしまいました。鳥羽水族館の飼育スタッフは「これはダメだ」と仕方なくじゅんいちとセレナを元の別々にプールにも戻したそうです。

でも、じゅんいちは諦めません。なんとかセレナのいるプールにいこうと大きくジャンプ!しかし、プールとプールの間に落ちて身動きが取れなくなってしまいます。飼育スタッフがじゅんいちをプールに戻すのですが、じゅんいちはセレナのプールに行こうと何度も何度もジャンプを繰り返します。

中村さん
「ジュゴンは賢いからジャンプしてもセレナのプールに行けないことぐらい理解できているはず。でも、何回でも同じことをやるんです。なんでそこまでせなあかん?」

テリーP
「もう止められないんでしょうかねぇ…。」

中村さん
「きっとそうなんやろな。じゅんいちの気が狂っているとかではなく、じゅんいちの遺伝子がそうさせているのだと思う。」

”生き物のカラダというのは遺伝子の乗り物にすぎない”
という説
があります。カラダの中の遺伝子が自分と同じ遺伝子を後世に残すために、乗り物であるカラダに様々な信号(指令)を送って動かしていて、生き物は自分の意思で動いているつもりでも、実は遺伝子の命令に突き動かされているだけなのだ…と。

ここから先は生き物のオスとメスの行動や生態は”遺伝子によって戦略的に引き起こされたものである”という考えに則ってトークが進んでいきます。

テリーP「我々は遺伝子に動かされていたんですかねぇ…」
遺伝子に動かされている?

4)♂と♀と遺伝子の話

そもそもオスとメスの違いは何か…?

中村さん
オス精子を、メス卵子を作ります。
新しい命になるのは卵子です。オスの精子はちょっとの遺伝子を交換して卵子にスイッチを入れる程度の機能しかありません。だから精子は作るのが簡単で大量に作られます。メスの卵子は新しい生命そのものなので一つ作るのに長い時間がかかります。しかも、受精後はそれをさらにお腹の中で何ヶ月もかけて育てていかなくてはなりません。なんだかメスって損だなぁと思ったりしてませんか?」

中村さん
「でも違うんです!哺乳動物のメスの場合、自分で産んだ子は絶対に自分の遺伝子なんです!ところがオスは究極的には絶対に自分の子であるかどうかが分からない。ここがオスとメスの根本的に違うところ。アシカはハーレムを作るけれど、そのハーレムの外のオスと交尾してしまうメスも実はいっぱいいるんです。」

メスは一生涯で埋める子供の数にどうしても限度があるので、少しでも良いオスの遺伝子を欲しがります。一方、オスが自分の遺伝子を残すためには、まずメスに選んでもらわなければなりません。結果、オスは強くなったり、大きな体になったり、タテガミが立派になったりしていきました。

遺伝子的な視点からオスとメスの違いを見ていくと…、

中村さん
「メスは子育ての時はあまり移動ができないので1つの場所に留まって近くの植物性のものを探して食べることが多いです。なので、季節毎や周期的に採れる食べ物を覚えることだったり、木の実の色などから食べ頃や毒の有無を見極めることが得意になっていきました。だから女性はルーチンを高めていくことに強いし、色に対する感受性がとても高い。だから女性は花が好きな人が多いんです。」

中村さん
「オスは蛋白源を確保して子育てしているメスのところへ運ばなければなりません。そのため遠くまでに狩りに出て巣に戻る必要があります。だから男性はアウトドア好きで、帰巣本能とも言える空間認識力に優れます。」

テリーP
「なるほど。「地図が読めない女」というフレーズをよく耳にしますけど、女が地図を読めないというよりは、むしろ男が地図を読むのが得意という話なんですね。」

中村さん
「それと、芸術家って男が多いやん?獲物を沢山獲ってきてくれるオスの方がモテます。でも、力が弱かったり、体が小さかったりするオスだってメスに選んでもらうために(つまり、自分の遺伝子を残すために)一生懸命知恵を絞ります。例えば、手先が器用なら使いやすい槍を作って獲物を捕らえたり…etc. そうやって何か一芸に秀でてメスに注目してもらおうとする気質をオスは強く持っているワケです。 」

過去の超水族館ナイトで中村さんが何度も力説してきた「弱点は克服しなくていい!長所を活かせ!」という話がここで出てきました。オスとメスの話はその原点と言えそうです。


面白いぞ、遺伝子トーク!

遺伝子トークが続く

5)水族館でもっと♂と♀と遺伝子の話を

水族館はオスとメスの話、性と遺伝子の話を「もっと堂々と、もっと積極的に扱うべきだ」と中村さん。現状では、なかなかそういった水族館は少ないようです。数少ない事例として、すみだ水族館ではペンギン達の略奪愛・浮気・三角関係・復活愛といったドロドロした恋愛事情をお客さんに紹介しています。

中村さん
「一部の水族館では飼育している生き物はペットではないから名前すらつけないというスタンスを貫いています。それはそれで一つの正しい考え方なのだけれど、でも、ペンギンそれぞれに名前があって、オスとメスの恋愛事情を紹介することで、お客さんがペンギンにグッと興味を持ってもらえるのなら、その方が水族館としての存在価値は高まると思うんだよね。」

水族館における”遺伝子の話”として面白いのがファインディング・ニモの話。ストーリーは皆さんご存知の通り。クマノミのお父さん(マーリン)はお母さん(コーラル)と一緒に卵の世話をしていたところをオニカマスに襲われてしまいます。お父さんが意識を取り戻した時には、そこにお母さんの姿はなく、お父さんはたった一つ残った卵から生まれた子ども(ニモ)を過保護に育てていく…。

中村さん
「でも、実はこの話、おかしいのよ。クマノミはお母さんがいなくなったらお父さんがメスに性転換するはずなんや!」

客席:笑(知っている人は一斉に頷く)

クマノミはイソギンチャクを住処にしていますが、その群れの中で一番大きな個体がメスとなり、二番目に大きな個体がオスとなります。残りはオスでもメスでもない子どもです。メスが死んでしまった場合は、今度はオスがメスになり、子供の中で一番大きな魚がオスになるのです。こんな不思議なことが海の中では自然に行われています。もちろんこれは遺伝子のなせるワザ。

遺伝子の底なしの奥深さを感じたところで前半の部が終了。