『やっぱりバスが好き!vol.1 ~バスヒストリーから乗りバス、撮りバス、旅バスまで!~』ライブレポート(11.11.12開催)
2011年11月24日
乗りバス、撮りバス、旅バス…。
お台場にバスファンが大集結!
カルカル初のバスファンイベントがついに開催!
長年バスを愛し、バス文化の向上に寄与してきた
『日本バス友の会』の重鎮が様々な切り口で
バスの魅力を余すところなく語りつくす!
さらにバスの降車押しボタン専門家の
30年がかりで集めたという凄すぎるコレクションの展示や
バス大好き女子大生”バス娘”の乗りバスレポート、
バスで巡る奈良の旅トークなどバスづくしの2時間となった。
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カルカル初のバスファンイベント、ここにスタート!
(司会進行:テリー植田プロデューサー)
【出演者紹介】
かれこれ40年近くバスに乗ったり、バスの写真を撮ったり、
バスに関する各種資料を集めたりしてきたという高島さん。
昨秋には「日本バス友の会」の2代目会長に就任。
昔、勤めていた会社でバスに深くかかわっていた城谷さんは
31年前に「日本バスの会」を立ち上げた張本人。
長く事務局長としてバスの文化向上の為の活動を続け、
昨秋、創立30周年を機に事務局長を退任。
現在は顧問として友の会をバックアップしている。
子供の頃からバスが大好きで日本全国のバスに乗車。
日本バス友の会に入会してまだ2年と経歴は浅いが、
友の会のHPでバス娘(ばすこ)としてコラムを担当。
豊富な知識とバス愛を武器に日々活動中。
おそらく日本で唯一人の”バスの降車ボタン収集家”。
カルカルでは「ゆるい専門家ナイト」にも登場。
カルカルの奈良トークや鉄道イベントでもお馴染みの方。
今回はバスで巡る奈良の旅を紹介してくれる。
イベントは休憩を挟んで前後半の2部構成。
前半はバス全般に関して視点を変えながら基礎知識を確認。
後半は降車ボタンの解説と乗りバスレポートが2本。
では、早速前半の内容から見て行こう。
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【前半の部】
そもそも「日本バス友の会」とは何か…?
城谷さんが1980年に仲間2人と設立。
当時、城谷さんは某会社の販売促進部に所属していて、
バス会社向けの各種PR誌などの制作を担当。
そんな仕事柄、バス会社を何社も訪問し、
写真を撮ったり、資料を集めたり、話を聞いたり、
約6年に渡ってバスを身近に感じながら過ごしてきた。
異動を機にバスの仕事から離れることになったが
せっかく集めた資料や知り合った仲間を失ってしまうのは
非常に勿体ないと考え、会の設立に至ったという。
単なるバス好きの集まりではなく、
バスを産業文化財として捉え、その保存活動や
バス文化の向上のための活動を展開。
昨年創立30周年を迎え、更に活動領域を広げている。
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1)バスのカタチに注目してみよう!
日本のバスそのもの歴史は明治36年、
広島や京都から始まったとされている。
まず、バスの外形状に着目してバスの歴史を追って行く。
古いタイプのバスはエンジンが運転席の前方にあった。
それが時代ともに床下つくようになり、
現在は後部座席下(左側)に配置されている。
日本バス友の会では、このボンネットバスのような
”産業文化財的に価値のあるバス”を後世に伝えるため
それらを引き取って保存する活動も行っている。
現在16台のバスを所有し、うち3台がボンネット型とのこと。
保存しているバスは外観からして非常に目立つせいか
人目に触れる場所に置いておくと悪戯が絶えなかったという。
そのため、現在は秘密の保存基地に退避させている。
普段は一般公開していないこれらの貴重なバスも
友の会主催のイベント等で触れ合うチャンスがあるので、
興味のある方は会のHPをチェックしてみると良いだろう。
また、友の会に入会すれば
保存基地を巡るツアー等にも参加することができる。
近年、ボンネットバスの外観を再現したレプリカ的なバスが
観光向けのミニバス等に使われることが多くなっている。
例えば、しずてつジャストラインが運行する…
車体自体は最近製造された新しいモノであるが、
形状は古いボンネット型を再現している。
ボンネットではないタイプのレトロ風バスもある。
例えば、仙台市交通局の…
ここで出演者から次々とマニアックなコメントが…!
石田さん
「この手のバスには珍しい降車ボタンがついていることが多く、
非常に注目している。例えば金メッキされたボタンなどがある」
宮津さん
「バスが好きで色々なバスを沢山見ていると
何の車体を改造してレトロバスに仕上げたかが
だんだん分かるようになってくる!」
ちなみに「るーぶる仙台号」は
いすゞの「エルガ」というバスを改造したものらしい。
最新のバスも見てみよう。
連節部分は円板状の金具で接続されていて
大きく折れ曲がることが出来る。
そのため意外と狭い道も器用に走れてしまう
その他、最新型のバスとしては
圧縮天然ガスを利用したCNGバスなどがある。
エコという観点ではCNGバスの他にも
廃天ぷら油を利用したバス等も話題となっている。
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2)車内に注目してみよう!
昔は極端に長いクラッチレバーが目立っていたが
ご覧の通り、最近のバスではかなり小さく作れられている。
手前に運賃箱があり、その向こう側に
テンキーのような押しボタンが並んでいる。
テリーさん「…で、そのボタンは何に使うんですか?」
高島さん「お客さんへの案内のデータを選びます」
昔は行き先表示は「方向幕」を手動で動かし、
車内放送は8トラックのテープを切り替えていたが、
現在ではこれらのデータはデジタル化され
ボタン操作一つで連動するようにプログラムされている。
テリーさん
「皆さんどのあたりの席に好んで座るんですか?」
城谷さん
「男性のバスファンはやっぱり運転手の左側にある
最前列の一段高くなっている席ですね!」
宮津さん
「私は後部座席の左側!エンジン音を聞きながら、
エンジンの温かさを感じながらバスに乗るのが好き!」
石田さん
「降車ボタンを集めるだけでなく押すのも好きなので
誰よりも早くボタンを押せるように車内全体を見渡せる
後部座席に陣取ることが多い。特に右側がやりやすい!」
皆さん、それぞれ”こだわりの席”がある様子。
鉄道ファンが先頭車両のベストポジションを奪い合うように
バスファンも実は密かに車内で戦いを繰り広げている。
3)バス停のカタチに注目してみよう!
バス停の最も代表的なタイプが…
ポールの上部に「丸板」と呼ばれる案内板が取り付けられている。
白百合のつぼみに形状が似ていることからこのように呼ばれる。
白百合型に先ほどの「丸板」を組み合わせたタイプ等、
複合型のバス停も数多く存在する。
中に蛍光灯が入っているタイプ。都市部で良く見かける。
日本で最もゴージャスなバス停がコレ!(↓)
鉄道で言うところのホームドアみたいなものが設置されていて
バスが到着した時に運転手が遠隔操作でドアの開閉を行う。
排気ガスや安全に考慮した最新鋭のバスターミナルだ。
実は名古屋は
日本屈指の「バス文化の街」であるらしい。
続いてはバス文化の街=名古屋の特徴的なバスを見ていこう。
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4)名古屋のバスに注目してみよう!
道路の真ん中に設けられたバス専用道路を走る。
基幹バス「幹」の字から「ミッキー」という愛称がつけられていたが、
現在は愛称は外されている。
(某夢の国を敵に回したくなかったのだろうか?)
ガイドレールを備えた専用軌道を
案内輪でトレースして自動操舵で進んでいく。
専用軌道上は「鉄道扱い」となるため
運転手はハンドルを握ってはいけないことになっている。
運転手は鉄道と自動車の両方の免許が必要。
専用軌道を抜けて地上に降りると通常の路線バスに戻る。
バスファンと鉄道ファンを兼業している人にとっては
1回の乗車でバスと鉄道の両方味わえる贅沢な路線である。
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5)バス会社に注目してみよう!
バス会社は小さい会社も含めるとその数は2千を超えるらしい。
近年は所有台数が3~5台程度を小さなバス会社、
特に観光バスの会社が増えているという。
一方、路線バスの会社は残念ながら年々減少傾向にある。
…とは言え、鉄道に比べると
まだまだ圧倒的に会社の数が多く、そのため
地方色豊かで個性的な路線バスが全国各地を走っている。
城谷さん曰く
「地方に行ったらまず路線バスの色を見て欲しい!」
山梨交通は昔は鉄道を運営していたが
現在はバス会社のみの運営となっている。
このところバス会社もグループ化や吸収合併が相次ぎ、
昔ながらのボディカラーが姿を消しつつあるとのこと。
十和田湖のバスも国際興業グループ入りして…
城谷さん
「時代の流れとは言え、地方色が薄れるという意味では
少し残念な気もしますね…」
せっかく遠くまで旅行にでかけたのに
自宅近くを走っているモノと同じ配色のバスが走っていたら
確かに「え゛っ!?」と思ってしまうかもしれない。
路線バス各社それぞれに「大人の事情」はあるとは思うが
できる限りローカル色は残してほしいと思う。
一方、大都市部ではローカル色どころか
様々な会社の路線が同じ道路を使用するため、
各社のバスが入り乱れた状態となっている。
停留所の密集地帯を探してみるのも面白いかもしれない。
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6)バス停の名前に注目してみよう!
バス停は鉄道の駅に比べても圧倒的に数が多い為、
非常に多種多様な名前が付けられている。
これは杉並区のコミュニティバスの停留所であるが、
昔、野菜などを運ぶ馬車が通った道がそこにあったことから
この名前がつけられている。
このように、その地域の歴史に関わる事柄や、
現在使われていない旧地名など
地域の特徴が色濃く出る名前が採用されることが多い。
また、田舎で目印となる公共物が何もないような場所では
「山田前」、「田中前」など、バス停前の土地の所有者名が
そのまま停留所名になっていることもある。
バス停の名前に着目して路線図を追ってみるのも
バスの楽しみ方の一つである。
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7:コミバスに注目してみよう!
コミュニティバスは地域住民の利便性の向上のために
自治体が運行するバスで、全国的で急速に普及した。
多くの場合イメージキャラクターやイメージカラーが設定され、
カラフルで可愛らしい外観をしたものが多い。
りんりん号は日野のポンチョという新型の車体を採用。
前輪が限界まで前に出されているのが最大の特徴で
これによって前ドアも後ろドアもノンステップ化させている。
これは中型バスをコミュニティバスに転用しているケース。
可愛らしさという点ではモノ足りないが、宮津さんによれば
「9mで売られている中型バスを7mに短くし運用している!」
とのことで、これもある意味、非常に特徴的なバスである。
(でもどうやって短くしているんだろう…???)
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8:バスの写真を撮ってみよう!
バスの写真の撮り方としては
バスの顔(正面)部分を7割、横の車体部分を3割とした
いわゆる7:3写真が一応の基本となる。
しかし、風景とともに撮る時はわざとバスをぼかしてみたり、
皆さんそれぞれ工夫を凝らしている様子。
高島さん
「このシーンを撮るためにわざわざこの部屋を予約している!」
これぞ”撮りバス”の鑑!
/* ここで前半終了 */
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バスのミニカーが多数並べられていた。
その他、日本バス友の会が出版した本やDVDなどを販売。
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【後半の部】
《バスの降車ボタンコレクション》
後半は”バスの降車押しボタン専門家”の石田さんから!
メーカーごとに各段に分類されていて、
左側に行くほど古いボタン、
右側に行くほど新しいボタンとなっている。
日本における押しボタン式のワンマンバスの歴史は
昭和26年の大阪市交通局に始まったと言われている。
点灯式のバスの降車ボタンは日本発祥の文化!
バスの降車押しボタンを製造するメーカーは
最盛期には10社を超えていたらしいが、
現在はオージとレシップの2社のみとなっている。
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《バス娘の都バスで山手線一周旅》
後半2番手はバス大好き大学生の宮津さん。
都バスを乗り継いでの山手線一周に挑戦したという。
バスの乗り換えの待ち時間を考慮して予定を組んだので
必ずしも最短経路とはならなかったが、
先日、無事に都バスの乗り継ぎによる
”山手線一周一筆書き”を達成したとのこと。
詳しくはバス友の会のホームページにある
コラム「バス娘が旅する東京」のコーナーを参照!
バス娘の誤算=大崎駅だけ都バスが走っていなかった
(東急バスか…)
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《路線バスで行く奈良の旅》
そして、トリは奈良県出身の伊藤壮さん。
ちなみにテリー植田さんも実は奈良県出身!
伊藤さんが次に向かったのは東大寺から程近い
「シルクロードの終着駅」というお店。
ここは何のお店かと言うと…
ジオラマの中を見ていくと観光バスを中心に
様々なバス会社のバスが多数設置されている。
奈良に行く機会があったら是非寄ってみたい。
ここで奈良のバス事情を少々…。
首都圏でいうところのPASMOやSuicaに相当する
いわゆるICカードが奈良交通にも存在する。その名も…
導入されたのは2004年ぐらいとかなり早い。
奈良というと保守的なイメージが強い土地柄であるが、
バス会社は先端技術をいち早く取り入れていた様子。
/*— 元バスメーカー勤務のお客さんによる解説 —*/
奈良のレトロバスは鎌倉を走っている
京浜急行の「りんどう号」と同じ車体でメーカーは日野。
中は木造となっていてパイプ類は金メッキとなっている。
続いては大きく南下して明日香村へ!
橿原神宮駅から明日香周遊バス(かめバス)に乗車。
そして、バスを降りては…
この他にも十輪院というお寺で朝のお勤めをした体験談など
路線バスを絡めながらの楽しい奈良トークが続いた。
さて、今回伊藤さんが紹介してくれた奈良のバスで
最も興味深かったのは…、、、
かつて奈良の五條から和歌山の新宮まで
鉄道で結ぶ計画(五新線計画)があったらしい。
しかし、それが途中でボツとなってしまい工事がストップ!
現在その鉄道予定地がバス専用道路として使われているという。
トンネルも鉄道仕様でグッとくる
最後は「CI-CA」のイメージキャラクターを務めている
「シーカくん」が踊っている動画をみんなで見てイベント終了!
おまけ:踊るシーカくん(ネタ提供:小倉沙耶さん)
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【まとめ】
カルカル初のバスファンイベントは盛況のうちに幕を閉じた。
初開催ということもあり内容的には
バス全般に関する概論的なトークが中心だったが、
「vol.1」というタイトルが示すように
今後の続編も検討されているとのことなので
更にディープなバスの世界が展開されることを期待しよう。
お台場から新しい『バス文化』の創造を…!
(ライター・GAMA)