水族館プロデューサー中村元 presents『中村元の超水族館ナイト2012年春 ~いまどきの水塊に溺れろ!~』ライブレポート(2012.5/13)
2012年06月25日
カルカルの超定番イベント『中村元の超水族館ナイト』。
カルカルでは通算12回目の開催です。
中村さんの「今年から年に4回やるで!」の言葉通りに、
前回の開催からまだ2ヶ月ちょっとしか経っていないのに
もう中村節がカルカルに響き渡っているという…。
楽しい忙しさは「お互い大歓迎!」ということで
中村さんには新ネタ&特ネタをどんどん喋ってもらいましょう!
さて、今回のメインテーマはズバリ『水塊』!
中村さんが水族館を語る上で最もこだわっているキーワードです。
過去11回の超水族館ナイトでも水塊という言葉は何度も登場してきましたが、
今回は中村さんの考える「水塊論」についてたっぷりと語ってもらうとともに
全国各地の水族館から「これぞ水塊!」な展示を
水中感&浮遊感たっぷりなスライドとともに紹介してもらいます。
また、後半の部では最近新設された水族館を中村さんがレポート!
「宮島水族館(みやじマリン)」、「沼津深海ミュージアム」、「京都水族館」、
そして、本イベント開催時点ではオープン前だった「すみだ水族館」も!
もちろん中村さんがリニューアルを手がけている
「おんねゆ温泉・山の水族館」(7月7日オープン)の続報も!
山の水族館をたった一人で支えてきたスタッフがゲストとして登場し
これまでの苦労話や新しく生まれ変わる水族館の見所などをPR。
開催間隔が詰まったのに内容はさらにてんこ盛り!
さすが中村元カンチョ!
水塊カクテル
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【おみやげ】
中村さんがプロデュースをしている山の水族館の運営をしている
『果夢林(かむりん)の館』より来場者全員にお土産が!
さらにイトウも置き物も10体!
こちらはイベント中に中村さんの出したクイズなどに正解した人に
その都度プレゼントされました。
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【出演者紹介】
毎度おなじみのこのコンビ!
あえて紹介するまでもないとは思いますが一応…。
鳥羽水族館元副館長。鳥羽水族館をプロデュースした後、
2002年にフリーの水族館プロデューサーとして独立。
新江ノ島水族館のプロデュースと展示監督を務め、
昨年はサンシャイン水族館をリニューアルを成功に導いた。
7月7日にリニューアルオープンを控える
「おんねゆ温泉 山の水族館」のプロデュースも担当。
超貧乏予算であったにもかかわらず中村マジックを駆使して
何やら凄い水族館を作ってしまったとの噂が…!?
そしてテリー植田さん(※)
(※東京カルチャーカルチャープロデューサー)
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【前半の部】
前半のテーマは中村さんが常々こだわっている
『水塊』 について。
過去11回の超水族館でも繰り返し登場してきた最重要キーワードです。
「人は水族館になぜ行くのか?」
この問いに対して中村さんが分析と熟考を繰り返し、
最終的に辿り着いた絶対的な答えがこの「水塊」なのだそうです。
「水塊」という言葉を辞書で引くと地球科学分野の専門用語として
”水温や水質が一定の関係にある一群の海水”と定義されていますが、
中村さんの言う「水塊」とは呼んで字の如く「水の塊」そのもののコト!
水族館に訪れるお客さんの中には
「××科の△△という魚が見たい!」などといった
明確な目的を持ったお客さんも勿論いるのですが、
全体で見た場合、そういった生き物マニア的な人は少数派で、
大半のお客さんは水の中に浮いているような
”癒し感覚”を求めて水族館に足を運んでいるようです。
・なんとなく涼しそうだから…
・なんとなく気持ち良さそうだから…
・なんとなく心が癒されるから…
水族館に行って、水の繋ぐ世界に身を置くことで
心が安らいだり、清々しい気持ちになったりして
「明日からまた仕事を頑張ろう!」
「嫌なことあったけど忘れちゃおう!」などと、
気持ちをリフレッシュさせることができる。
水族館はそんな魔力を秘めた魅惑の空間と言えそうです。
中村さんはそんな「水塊にこだわった水族館」を
次々とプロデュースし、それぞれに成功を収めてきました。
その「水塊」についてもっと知りたくありませんか?
水族館プロデューサー・中村元流「水塊論」!
それでは熱く熱く語ってもらいましょう!
1)水塊とは…?
”水塊=水の塊=水の集合体”
だからと言って、単純に水槽に水を満たしただけでは
それは「水塊」とは呼べません。
なぜなら水は透明なので空気があるのと変わらないからです。
(つまり何もないのと一緒になってしまう)
水塊を演出するためには
そこに様々な”要素”が存在しなければなりません。
その要素というものが、大小の魚だったり、
擬岩だったり、水の動き(水流、波、飛沫、泡)だったり、
光線だったり、光の陰影だったり、奥行き感だったりするのですが、
それらについて、以下、徐々に説明してきます。
とにかくキーワードは「水中感」&「浮遊感」です!
2)中村さんが初めて水を塊として感じたのは…?
中村さん曰く
「水塊を語るときに一番最初に紹介者なければいけないのが
兵庫県の須磨海浜水族園と福岡県のマリンワールド海の中!」
なるほど!
では、まず須磨海浜水族園から見てきます。
リアルに海を再現しようと水槽内に波を起こしているのですが
この水のダイナミックな動きがより水塊を感じさせてくれます。
水槽内に大きな岩場があり、巨大エイと大小様々な魚達…。
現在の須磨海浜水族園は1987年にリニューアルされたものですが、
当時このようなスタイルの展示は非常に画期的だったそうです。
古い水槽なので今となっては貧相に見えてしまいますが、
これも水に囲まれた空間を演出しています。
周りに水があり、周りに生き物がいる。
こういった展示を大々的に仕掛けたのは須磨水族館が最初で
中村さんはこれを「水塊の始まり」と評していました。
続いて、海の中道…。
大きなH形構が入っていることから分かるように
これもかなり古い時代に作られた水槽。
海の中道は水槽の中にダイバーが入って
解説を行うサービスをいち早く導入した水族館でもあるらしい。
大きな水槽を作るのが技術的に困難だった時代に
あえて大きな水槽を作り、そこにダイバーが入っていく…。
お客さんはダイバーの動きを通してそこにある水の存在を認識し、
水中の「浮遊感」を感じ取ることができます。
イワシの群れと大きなシロワニが立体感が素晴らしい!
(立体的になるほど水塊を感じやすくなるそうです)
テリーさん
「このブルーはグラデーションがありますねぇ~」
中村さん
「自然に色が着いてくるんですね!」
先ほど「水は透明なので…」と書きましたが
水槽のサイズが非常に大きく、且つ、非常に深ければ
水は太陽光の長波長側の色を吸収していくので
海の中と同じように青色だけが残り
自然な感じのブルーの世界が出来上がります。
このブルーのグラデーションが水塊感を際立たせます。
コレは「かいじゅうアイランド」というところに設けられた
「海中CLUBE」という名の水中観察室。
四方ほぼ全面をガラスで囲まれたブルーの世界であり
水中感と清涼感に溢れる展示施設となっている。
中央には旭山動物園でブレイクした円柱型チューブがあり
その中をアザラシがゆったりと上下に通り抜けます。
中村さんは須磨海浜水族園の各展示や
マリンワールド海の中道のパノラマ大水槽を見て、
水を「塊」として捉えるようになったと言います。
でも、この時点では「水塊」という言葉はまだ生まれていませんでした。
3)水塊という言葉の誕生
では、中村さんはいつ「水塊」という言葉を生み出したのか?
それは、この水族館(↓)に行った時だそうです。
中村さんが初めて美ら海水族館を訪れた時に
その青い水の塊に圧倒的され、それをズバリ表現する言葉として
いろいろと思索した末に辿り着いたのが「水塊」だったと言います。
中村さんは美ら海水族館を見て、正直
「ダメだ!これは敵わん!」と思ったそうです。
美ら海水族館の展示は環境が海と全く一緒!
海の水も、太陽の光も、そのまま採り入れた総量7500tの超巨大水槽。
海の中と同じようなブルーのグラデーションが広がり
そこに巨大なジンベイザメが複数泳ぐ夢のような世界。
とにかく圧倒的な水中感&浮遊感!!
中村さんはジンベイザメの泳ぐ黒潮大水槽だけでなく
エントランスにあるサンゴ礁水槽にも圧倒されたそうです。
”お金”と”場所”と”キレイな海”、”青い空”…等々。
全てがそこにあるからこそ出来た”奇跡の水塊水族館”。
それが沖縄美ら海水族館というワケです。
しかし、中村さんは水族館プロデューサー。
水族館をプロデュースするからには
「無理!勝てない!」とは言っていられない!…と。
4)水が沢山あれば良いと言うワケでもない!?
これ(↓)を見てください。
美ら海水族館「黒潮水槽」の7500tには及ばないものの
こちらも5400tの水量を誇る超大水槽!
…のはずですが、なぜかいまひとつ広さを感じません。
中村さん
「それはたぶん向こう側の鉄骨やお客さんが
はっきりと見えてしまっているからやと思うぞ!」
なるほど。
同じ水槽ですが先ほどの昼間の雰囲気とは一転して
こちらは奥行きがあってグッと「水塊」を感じます…。
中村さんはこの事例を見て
「ただデッカイだけじゃないかもわからんぞ!?」
と思ったそうで、いかに水塊を演出するかを
真剣に考えるようになったと言います。
/*— 以下、中村さんが水塊研究のヒントを得た展示 —*/
壁の色や照度の絶妙なマッチングにより
水中感抜群の濃いブルーが表現されている。
そこに泳ぐジンベイザメも凄く良い感じ。
(ちなみに水槽サイズの関係でジンベイザメは
5mを超えると海に放流されることになっている)
以布利センターは高知県にある海遊館の研究&畜養施設。
畜養用途の水槽なのでただ広いだけで何もない水槽となっています。
しかし、その広さや暗さ、ブルーの加減が
本当の海の中にいるかのような雰囲気を作り出しています。
岩がうまく配置されていて非常に奥行き感があります。
擬岩や流木などのオブジェクトの配置も非常に重要と考えられる。
トンネル水槽は昔からありますが
空の下にトンネル水槽を作ったことによって
空の色がそのまま海の色になっていて非常に気持ち良い。
もう一つ素晴らしいのは「光」!
空間においては光は目に見えませんが、
水中では水の存在により光線として見ることが可能。
その光線が素晴らしい水塊感を生み出してくれています。
名古屋港水族館「メインプール」
(※残念ながら亡くなってしまった初代シャチのクーちゃん)
名古屋港水族館のメインプールは
長さ60m、幅30m、最大水深12mという超巨大プール。
当然、水中は自然と良い感じのブルーに染まります。
そこにシャチが泳ぐとなればそのスケールに圧倒されてしまいます。
しかし、大きなプールが凄いのは先述の通り当たり前。
名古屋港水族館の絶妙な展示はむしろコチラ(↓)の方!
水槽内の岩の配置具合を見事ですが、それに加えて
中村さん
「水槽の前面を全て見せずに岩で隠しているのが素晴らしい!」
この演出によって水槽がどこまであるのか分からなくなり、
奥行や広さが何倍にも感じられるようになるそうです。
奥行き感の演出が非常に巧みと中村さんが絶賛していました。
5)中村マジック、はじまりの時
中村さんは「水塊」を演出するにはどうするべきかを考え続け、
新江ノ島水族館をプロデュースした際には色々な工夫を施しました。
岩で奥を隠してたくさんの陰影を作っています。
これによりどこまでも続いている海の中の雰囲気を演出!
そして水槽の主役には「イワシの群れ」をチョイス!
水槽のサイズから考えて、この水槽に
ジンベイザメのような巨大魚を入れることはできない。
…というより、そもそも
中村さん
「美ら海と同じやり方で勝負をしたら負けるに決まっている!」
それならばと中村さんは逆転の発想で
小さなイワシの群れで立体感を演出しにいきました。
イワシの群れを入れることで立体感が出ただけでなく
イワシの群れの圧倒的な躍動感によって
”生命の存在”をも強く感じる水槽に仕上がったそうです。
他所の水族館もイワシで追従!
(マイワシトルネード /名古屋港水族館)
中村さん、イワシで特許とか取れなかったんですかね…?(笑)
/*—–
発明の名称:「水塊演出水槽」
水族館の大型水槽においてイワシの群れを入れる。
—–*/
…なんて?(笑)
6)超・中村マジック!
中村さんはその後も水塊の演出手法を考え続け
その全てを注ぎ込んだのが中村さんのプロデュースによって
大きく生まれ変わったサンシャイン水族館でした。
中村マジックの代名詞「サンシャインラグーン」!
(ターコイズブルーが美しい!)
実際にサンシャインでこの水槽を見た人は分かると思いますが
ものすごく広く感じますよね…。でも実はかなり狭い水槽です。
奥に向かって傾斜をつけてみたり、
5m先の岩が20m先にある岩に見えるように
擬岩の造りをわざと大雑把にして濃い色をつけたり
その他、色々な中村マジックが施されていて
美ら海よりもはるかに小さくて狭い水槽なのに
それに勝るとも劣らない水塊度の高い水槽を演出しています。
水量は少なくとも頭上にこんな形で水があったら
「落ちてきそう」と水塊に働く重力みたいなものを感じます。
サンシャイン水族館の目玉の一つ。
アシカのサイズを考えたら狭い水路ではあるのですが
空をアシカが気持ちよさそうに飛んでいる様子が
非常に爽快感や清涼感を感じさせてくれます。
中村さんがプロデュースを手がけている
「おんねゆ温泉・山の水族館(7月7日オープン予定)」にも
さらに研ぎ澄まされた中村マジックが施されている模様…。
幻想的なブルーと照明が非常にキレイ。
中央に地元北海道の天然木を配置している。
ハイドロウィザードは水流を起こすポンプ。
魚が水流に向かって泳ぐ様が生命の逞しさを伝えてくれる。
7)中村さんオススメの水塊水族館
さて、これから本格的な夏を迎えるにあたり
是非、水族館で水塊に溺れて清涼感を味わいましょう!
…ということで、
水塊のプロフェッショナルと化した中村さんに
全国各地の水族館の中から
「水塊度の高い展示」をピックアップしてもらいました。
大きな水槽で岩も多く立体的で水を感じさせる水槽。
そこにペンギンの群れの迫力、躍動感、スピード感が加わり
抜群の水塊感となっているそうです。
これは中村さんが
「この前行ってみたら凄く良くなっていた!」と絶賛した水槽。
最近、イワシの群れを入れて素敵になったらしい。
良い感じに外光を取り入れていてその中をスナメリが泳ぐ。
水槽自体は古いまま入れている生物を変えただけですが
それだけでも大きく印象は変わってくるようです。
水族館というよりは生き物の教育的施設。
魚だけでなく小動物や昆虫(生体&標本)、
鳥類、両生類、爬虫類なども展示されており
入場料300円とは思えない充実した展示を行なっています。
そこで中村さんが「これは凄い!」と思った水槽だそうです。
本物の水草で森を作っている。
テリーさん
「これはいいですねぇ!水中庭園みたい!」
中村さんはサンシャイン水族館に
これに負けない展示を作らせようとしているとのことですが、
なかなかコレを上回るのは大変なことらしいです。
これも中村さんが非常に感心した水塊とのこと。
人の影からだいたいの大きさが分かると思いますが
水槽自体はあまり大きくはなく深さも浅い水槽です。
しかし、大きく広く感じられます。
天井がなく外光が射し込み、色々な種類の魚の群れが泳いでいる。
底面の砂が素晴らしい陰影を与えていて奥行がありブルーも美しい。
水中感たっぷりな水槽に仕上がっているように見えます。
これは実際に現地で見てみたいですね…。
水族館は全国にたくさんありますが、
近年どんどん水塊度の高い水族館が誕生しています。
まだまだ隠れた水塊があるかもしれませんね。
(前半の部終了)
=====
【後半の部】
後半は去年から今年にかけて新設された水族館を
中村さんが次々と取材に行ってきてくれたので、
その特徴や見所などをレポートしてもらいました!
1)宮島水族館(みやじマリン)
宮島水族館は2011年8月にリニューアルオープン。
展示は旧宮島水族館同様、瀬戸内海の生物がメイン。
広島といえば牡蠣が有名ということで牡蠣水槽もあるらしい。
牡蠣の展示。水中だけでなく筏も再現。(水面が低すぎるような…?)
展示自体はアイデアもあって悪くないとのことですが、
全体的に水面が低い位置にあり、水中を観察するのに
わざわざしゃがまないといけないのが若干気になります。
中村さんコメント
「もう少しお客さん目線に立って設計されていると
もっと良くなったんじゃないかなぁ…」
着想は良いのに勿体無いという感じでしょうか…。
ペンギンが頭上を飛んでいるように見えます。
ただ、奥行きが足りないせいか潜水はなかなかしくれないようです。
ここも見下ろす格好になっています…。
目線の高さになかなか生き物がいてくれないというのは
人によっては結構見学の際にストレスになるかもしれませんね…。
でも、この水族館はこの子(↓)に会えれば十分でしょう!
2)沼津港深海水族館
生態や外観に特徴のある深海生物を楽しむ水族館なので
この日のテーマである「水塊」はいったん脇に置いておきます。
沼津港のあたりは深海生物がどんどん上がるので
メンダコも割とコンスタントに補充されているようです。
中村さんが訪れた時は3匹もいたそうです。
…とは言っても長期飼育は非常に困難な生物なので
メンダコを見たい人は事前に問合せた方が良いとのことでした。
海に投棄された自転車を再現して
「海にゴミを捨てるな!」とのメッセージを発信しています。
このような人工物を入れると
「リアリティが増す!」と中村さんが解説してくれました。
確かに生々しさはありますよね…。
テリーさん
「どこかのラブホみたいですねぇ~」 ←おひおひ
3)京都水族館
実は中村さん、京都水族館には
それほど期待していなかったとのことなのですが、
行ってみたら「意外と良かった!」との評価。
このイベントレポートを書いている私も実は先日行ってきました。
中規模の水族館ですが
新江ノ島水族館よりもひとまわり大きな感じです。
中村さんによれば京都水族館はもともと
海生物のみ水族館として計画されたらしいのですが
「京都に海の水族館はいらない!」
という地元の反対運動を受けて、急遽、
京都の自然を表現する展示を作ることにしたそうです。
それがこの「京の川ゾーン」。
これが実にリアルに作られていて、精巧に作られた擬岩などは
相当なお金がかけられていると思われます。
しかし、ここでも中村さんから「水面が低い!」との指摘有り!
(常にお客さん目線を忘れないのはさすがです!)
京の川ゾーンの主役はこのオオサンショウウオ。
チュウゴクサンショウウオとの交雑種の問題を取り上げ
かなり力を入れた展示を行なっています。
このオオサンショウウオが京の川ゾーンの主役どころか
京都水族館全体のイメージキャラクター的な存在として
扱われていたのにはちょっと笑ってしまいました。
(後から取ってつけたく展示のクセに)
京都水族館の見所は色々ありますが
中村さんがピックアップした見所は3つ!
スライドの写真の中央にあるコの字型になっている水槽。
ここに入って見上げるとオットセイが
頭上をスーッと滑っていく様子が楽しめて
「これが面白くて見ていて全然飽きない!」
と中村さんが興奮気味に語っていました。
ゴマフアザラシが本水槽から見学路の地下を通って
チューブ水槽に来てくれます。
みやじマリンと同じような形状の水槽で、
やはり空飛ぶペンギンの姿が楽しめます。
ただ京都水族館の方が水中部分に奥行きがあるため
ペンギンが潜水する様子もしっかりと観察できるようです。
以上が中村さんが取り上げた京都水族館オススメポイントですが、
私が京都水族館に行ったときはオットセイは滑らず、(涙)
アザラシはチューブに来ず(涙)、ペンギンは全羽陸上でした。(涙)
訪れる時間帯によっても水族館の楽しさって変わりますよね…。
中村さんは京都水族館に関しては
午前中の早い時間の見学を推奨していました。
行ってみようと思われている方は是非その時間を狙ってみては!?
中村さん曰く
「これ、えのすいと殆ど一緒や!」
私も実際に見て「あ、えのすいだ!」と思いました。(笑)
ただ、新江ノ島水族館の方がイワシが渦巻いている分、
京都水族館の方が若干物足りない感じがしてしまいます。
中村さんも
「もう少し群れを成す小魚を入れていくと良くなるのでは?」
とコメントしていました。
中村さんが「ジャンプしかしない」と語っていましたが
本当にごく簡単なジャンプしかしません。(苦笑)
「イルカは私たち人間と同じ哺乳類なんですよ~」
といったお勉強タイムが冗長で、
クライマックスも割とアッサリとしています。
ただ、あのEPSONアクアスタジアムでさえも
オープン直後のイルカショーは結構グダグダだったので
京都のイルカたちもまだまだこれからでしょう!
これも相当お金かかっていますよね…。
貧乏予算で山の水族館をプロデュースしてきた中村さんが
恨めしそうに画面を見つめていたのが印象的でした。(笑)
若干コンテンツ不足な印象もありますが、
京都らしく上品に演出された水槽も多く、
中村さんの評価も「まずまず」といったところなので
気になる方は京都に足を運んでみてはいかがでしょうか?
4)すみだ水族館
本イベント開催時点ではオープン前でした。
淡水の熱帯魚水槽から始まります。
テリーさんが「オフィスの中みたい!」と言っていましたが
本当にそんな感じで、中村さんは
「水塊というより水槽を見せている水族館」と言ってました。
水塊度は低いですが一つ一つの水槽は非常に綺麗です。
私の記憶が正しければ
ハナガサクラゲ、ギヤマンクラゲ、カギノテクラゲ、
カラージェリー、パシフィックシーネットル、サルアシクラゲ…等。
奥には稚クラゲからの成長を展示するラボがあります。
中村さんから特に指摘はありませんでしたが
見ての通り水槽が二段になっているんですよね。
これ、下の水槽は身をかがめないとよく見られません…。
実はアクアギャラリーという小型水槽のコーナーも
上下二段構えになっていて下の水槽は見にくいです。
(中村さんならこんな水槽の配置はしないだろなぁ…笑)
チンアナゴ&ニシキアナゴの超大群。
スカイツリー(634m)にあやかって634匹いるらしい。
中村さん
「凄いけど634匹ピッタリということは多分ないと思うぞ!」
私もそう思います。(笑)
でも、こんな大群は他所の水族館ではまず見られないので
一見の価値はあるかもしれませんね…。
小笠原のシロワニが展示されています。
シロワニは日本では小笠原にしか生息していないそうです。
オープン直後にいきなりコンディション不良で
展示できないというアクシデントがありましたが
現在は元気に泳いでいるようです。
中村さんは「水が少ない(つまり水塊度が低い!)」と
やや辛口のコメントをしていましたが
それはこの日のテーマである水塊という視点で見た場合であって
一つ一つの水槽は非常に綺麗で緻密に作られています。
(プロのアクアリストが全力で作っている感じ)
スカイツリーの見学のついでにどうぞ…。
5)おんねゆ温泉・山の水族館
トリを飾るのは中村さんのプロデュースのこの水族館!
7月7日オープン予定!
山の水族館を今まで一人で支えてきた佐藤主任が
北の大地からお台場まで来てくれました!
客席からの大きな拍手に緊張気味の佐藤さん。
Q:テリーさん
「山の水族館の一番の見所は?」
A:佐藤さん
「山の水族館の一番の見所はイトウですね!」
幻の魚と言われる「イトウ」ですが、
今時の水族館にはイトウそれほど珍しくないそうです。
イトウは養殖されており十分に供給されているからです。
でも、山の水族館のイトウは全て天然モノ!
しかも体も大きいのが特徴!
また、中村さんの経験上、水族館の魚は
大きくなるにつれて顔が崩れてきてしまうそうなのですが
ここのイトウは非常に美しい顔を保っているそうです。
綺麗な地下水をかけ流しで飼育に使っているのが
その原因ではないかというのが中村さんは見解です。
なんと1m70cm!
こんなに大きくなってしまった秘訣は「温泉水」。
ちょうど良い冷泉があり、それを利用して育てていたところ
どんどん大きくなってしまったとのこと。
残念ながら死んでしまったそうなのですが以前飼育されていた
コロソマもおそらく日本一と思われる大きさを誇っていたそうです。
中村さん曰く
「日本全国に美肌の湯はいっぱいあるけど
本当に美人になっているかどうかは実に怪しい。
でも、ここは本当になっている!魚が証明している!」
中村さんと佐藤さんは山の水族館の再生だけでなく、
温泉の効能とともに温根湯の町をも再生しようという勢いで
現在7月7日に向けてラストスパート中とのこと!
生まれ変わった山の水族館に期待です!
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【まとめ】
中村さんが常々語っている「水塊」について
たっぷりと話を聞くことができて非常におもしろかったです。
オススメの水塊もたくさん紹介してもらえましたが
人それぞれ感性は異なりますし、アクア”ミュージアム”ですから
自分が心地よいと思える水塊を自分を見つけるのが一番だと思います。
中村さんの水塊論をヒントにマイベスト水塊を探せたらいいなと思いました。
新水族館のレポートも興味深かったのですが、
中村さんはどうやら新たなプロジェクトに動き出しているようです。
「まだ喋れない」とのことですが非常に気になります…。
それは次回以降のお楽しみということで。
年4回開催なので次回なんてあっという間ですよ!
(ライター・GAMA)