いきなり大ブレイク!地図地理好き大集会再来!日本地図センターpresents 『地図ナイト2~来たれ2012年!一富士・二富士・三に富士!』ライブレポート(11.12/10開催)
2011年12月20日
7月の第1回開催からいきなり満員大盛況となった
史上最大の地図エンタメイベント『地図ナイト』が
数多くのリクエストに応えてカルカルに再来!
今回はテーマは来る2012年に
富士山のような高らかな希望を込める意味で
「地図で眺める富士の山」に決定!
地図と富士山は昔から切っても切れない深い関係にある。
地図上の描かれた富士山を愛でるも良し、
地図を利用して理想の富士山見ポイントを探すも良し。
”地図好き”も”富士山好き”も皆、集まって
地図と富士山の新しい楽しみ方を発見しよう!
あまりにも深く面白い地図と富士山の世界。
一富士!二富士!!三に富士!!!
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入場時に「1/20万地勢図1枚」が手渡される。
「特別富士見資料」のオマケ付き。
使い方は1/20万地勢図の余白部分を折って白黒の地図と合体させる。
これで東京から富士山までが繋がった地図が完成する。
更に経線と緯線の描かれたトレーシングペーパーを
カラーの地勢図の上に重ねると、東京近郊の各地点から
富士山までの距離と方角がひと目で分かるようになる。
富士見ポイントを探す上で便利な資料となる。
カルカル恒例のイベント限定メニュー!
この日は前回好評だった「MAP丼」
(M:麻婆豆腐 A:& P:ポークソテー)が再登場。
ドリンクメニューとして「逆さ富士」、
「ダイハード」(ノンアルコール)が用意された。
しかし、なぜダイハード…?
ああ!そうか!
ダイハード ⇒ 不死身 ⇒ 富士見 だ!
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【出演者紹介】
「ズームイン!!SUPER」など日本テレビ系列を中心に
お天気キャスターとしてメディア出演多数。
専門は気象学だが、大学で地理地質学も教えている。
富士山を見るマニア=富士見スト。
太陽と富士山が重なった「ダイヤモンド富士」や
様々なオブジェクト越しに見る「のぞき富士」など、
富士山の美しい姿を日々追い求める富士見業界のカリスマ。
富士見坂に代表される富士見スポットを熟知する。
日本の鳥瞰図研究の第一人者。
もちろん自らも精巧な鳥瞰図を描く鳥瞰図師。
鳥瞰図や山々に関する著書共著多数。
代表作に田代さんとの共著「展望の山旅シリーズ」がある。
日本地図センター主幹研究員。
地図業界のエンターテイメント担当として
地図をより楽しむためのアイデアを世に問い続ける。
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では、イベント内容を紹介!
【1.田代さん&藤本さんクロストーク】
沢山の共著本を出版されているお二人。
田代さんは富士見業界のカリスマであり
藤本さんは鳥瞰図業界のカリスマである。
まず二人が出会った経緯などが語られた。
田代さんは1972年に神奈川県の高校教員(地理)となった。
当時から山が好きで、学校の屋上から見える山々を眺めては
写真に撮ったり、スケッチ、トレースしたりしていたという。
そんなある日、「地図と友」という雑誌で自分と同じように
学校から見える山々を描いている都立高校の教員がいると知り、
手紙を書いたという。その相手が藤本さんであった。
互いに地理の高校教員同士で同世代、且つ同じ趣味。
「山」をキーワードにすぐに打ち解けて
その後、数々の共著本を世に出してくことになる。
従来の鳥瞰図等は山の名称が不正確なものが多かったが、
田代さんと藤本さんは正確に山座同定を行い、
山の正しい名称、正しい位置を展望図に記入していった。
「展望の山旅シリーズ」はそれが形になったものである。
そんなお二人が元にしたという本がコチラ(↓)。
古文献なども含めて、どのような文献に当たって、
いつ誰がどのような形で東京から見える山について調べたかが
克明に記載された本であり、田代さんも藤本さんも
「非常に素晴らしい本!」と絶賛していた。
古い本なのでもう書店に売っていないとのことだが、
田代さん曰く
「ネットで古書として入手したり、図書館等で探すなどして
興味のある方は是非見て頂きたい!」
それぐらい山岳展望の分野ではバイブル的な本なのだそうだ。
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【2.藤本一美さんのプレゼン】
鳥瞰図師でもある藤本さんは
絵地図、古地図における富士山を集めて紹介。
今回は特に…
…と、その前に!
藤本さんご自身の作品(1983年制作)の紹介から。
大東京パノラマ鳥瞰図(これは凄い!!)
(船橋上空高度9000フィートからの眺め)
航空写真を元に鳥瞰図を起こしたもので、
制作に4ヶ月もかかったという力作。
手前を流れる大きな川が江戸川。
それが東京湾に注いでいる辺りが浦安。
東京タワー、皇居等もしっかりと描かれている。
中央線が立川まで真っ直ぐ伸びて
その先に扇状地の青梅があり…、、、。
航空写真ではボケてしまうような遠方の地形、
山々についても克明に描かれている。
ある意味、写真よりリアルで分かりやすい。
さて、ここからが古い絵地図の紹介。
2012年にオープンする東京スカイツリーの第1展望室に
この屏風絵が飾られることになっている。
(既に設置は完了しているらしい)
江戸後期の絵師、鍬形恵斎の作品で
空から江戸の城下町を見た構図となっている。
中央遠方に富士山がそびえる非常に雄大な鳥瞰図だ。
藤本先生が今一番注目しているという吉田初三郎の作品。
筑波山麓で「稲田石」という花崗岩を採石している会社
「中野組石材部(現・中野組石材工業株式会社)」が
会社案内の絵として発注した絵地図である。
この会社の石材商品がどこに運ばれて、
どのような建物に使わているかを表現している。
上の写真では分かりにくくなってしまったので、
赤矢印入れたが、左上に富士山が描かれている。
中野組石材部の採石場や会社事務所などを
フィーチャーする形で大胆にデフォルメされた鳥瞰図。
藤本さんは科学的に正確な鳥瞰図の制作にこだわってきたが、
このような魅せる絵地図も近年高く評価しているとのこと。
魚眼レンズで覗いたかのように茨城がグッと前に強調され、
遠方は東は函館、西は門司まで描かれている。
これも写真では分かりにくくなってしまったが、
赤矢印を部分にやはり富士山が描かれている。
富士山を絵に書き込む効果は想像以上で、
そこに富士山があるだけで方角を瞬時に察知できる。
日本人にとって富士山はそれほど特別な山なのだ。
続いて葛飾北斎の作品。
現在の小石川から見た鳥瞰図的な絵。
目黒五百羅漢寺から富士山を眺めている光景。
昔から「富士見文化」が定着していたことが伺える。
「濃男」とは現在の表記に直すと「農男」 。
富士の残雪が形作る様々な模様を雪形と呼ぶが、
農夫のような姿の雪形が山頂近くに浮かんでいる。
かなり大胆なダイヤモンド富士。
最後に広重。
鯉のぼりの奥にくっきりと浮かび上がる富士山。
爽やかな五月晴れの水道橋からの眺望が描かれている。
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【3.平井史生さんのプレゼン】
平井さんは”カシミール3D使い”。
カシミール3Dとは国土地理院が公開しているデータから
地形を鳥瞰図的に表示させることができるソフトである。
上のスライドには富士火山に年齢が記載されている。
富士山は10万歳の活火山。箱根火山は40万歳の活火山。
愛鷹山は40万歳で10万年前に火山活動を終えている。
富士山が非常に美しいのは
「火山としてまだ若い」ということも一つの要因であるらしい。
さて、カシミール3Dを使うことで
「色々な場所から富士山がどのように見えるか?」
をシミュレーションすることができる。
関東在住の方なら皆、感覚的に気づいているとは思うが
関東平野では富士山に近づきすぎるほど
富士山が見え難くなるということがこの結果からも分かる。
平井さんは気象予報士なので
富士山のケッペン気候区分を考えてみたという。
富士山の麓から山頂までの観測データを統計的に調べ、
次のようなグラフを作った。
富士山頂はET(ツンドラ気候)、
山麓は殆どCfa(温暖湿潤気候)であるが、
富士五湖の高さの当たりはCfb(西岸海洋性気候)だ。
もうひとつ気象面からのアプローチとして
「天候によって富士山が見えるか見えないか」
のデータを紹介してくれた。
美しい富士山を見るには場所も大事であるが
それ以上に天気も非常に重要なファクターである。
富士市役所から
・富士山の全体が見えた日 ・富士山の一部が見えた日
それぞれをカウントしてグラフ化したものだ。
これによれば12月が最も富士山が良く見えるということになる。
なお、横軸が6月から始まって7月で終わっているのは
「グラフの形を富士山型にしたかった!」
という平井さんのこだわり。(笑)
東京在住の方にはもっと参考になるデータが存在する。
成蹊中学校・高等学校が学校教育の一環として
かなり昔から学校から富士山が「見えるor見えない」を
毎日記録しているとのこと。
ただ、学校ではその膨大なデータを
詳しく解析する作業までははしていなかったらしい。
そこで平井さんが最近20年間のデータを徹底調査!
東京(吉祥寺)で過去20年間、
最も富士山が見えた日は1月4日!(80%以上)
12月28日~1月10日、1月24日~30日の期間も
それぞれ60%以上の高い確率であった。
日暮里富士見坂でダイヤモンド富士が見られる確率は
11月中旬は33.9%、1月下旬は60.6%。
気象予報士・平井さんの渾身のデータ解析!
皆さんの富士見ライフに是非積極活用してほしい。
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【4.田代博さんのプレゼン】
まずは東京から見える富士山の特徴を確認。
/*———-
・首都からその国の最高峰を望めることができる!
・富士見坂に代表される”富士見”地名がある!
・高層ビルや高架だけでなく路上からも楽しめる!
・観察地点毎に丹沢山地との位置関係が変化する!
・美しいダイヤモンド富士が見られる! …等々
———-*/
富士見坂は山手線内に18箇所あるらしい。
(うち一般人が立ち入り可能な富士見坂は16箇所)
最も有名なのが日暮里富士見坂である。
しかし、時代の流れとともに高層ビルなどが建設され、
景観がどんどん損なわれているという…。
ここで富士見坂に詳しい千葉さんがワンポイント登壇!
日暮里富士見坂の眺望を更に悪化させるような
高層建築が更に計画されていることが判明したとのこと。
千葉さん曰く
「これが建ってしまうと景色が成り立たなくなる!」
ちなみに1999年の眺望は以下の通り。
日暮里の富士見坂に限らず都内の富士見坂からは
どんどん富士山が見えなくなっている。
ただ、高層ビルを建てる側に法的な問題があるワケでもなく
乱暴に「建てるな!」「やめろ!」とも言えない事情があり、
景観を守るために千葉さんは非常に苦慮されている様子。
”富士見坂”という文化を一人でも多くの人に知ってもらい、
眺望保全に関心を持ってもらうことが大事であると感じた。
(富士見坂眺望研究会ホームページ)
さて、ここからは田代さんの十八番。
ダイヤモンド富士!!
D:代表的 D:ダイヤモンド F:富士 (笑)
本栖湖に映るダイヤモンド富士。素晴らしい。
太陽が富士山頂から転がり落ちているような連続写真。
今度は逆に登っていくバージョン。
撮影場所の上高下(かみたかお)は
元旦にダイヤモンド富士が見える場所として
富士見業界では非常に有名なスポットであるらしい。
車で東名高速の都夫良野トンネルを走ってもらい
助手席から撮影したモノだとか。
客席からも写真の美しさに感嘆の声が上がっていた。
これはナイスアイデア!!
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【5.小林さんのミニプレゼン】
開演時に紹介されたアジェンダにはなかったが、
小林さんもプレゼン資料を用意していたとのコトで
急遽ミニプレゼンが行われた。
戦争中に米軍が偵察撮影した写真の中の1枚。
富士山の火口と捉えている。
今これと同じアングルから富士山の写真を撮ると
山肌に走ると道路もたくさん写り込んでしまうが、
この時代はまだ山肌に人工的なモノが殆どないため
非常にキレイな姿となっている。
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【6.ミニミニ地図地理検定】
最後はミニミニ地図地理検定の答え合わせ!
休憩時間等を利用して事前に解いておく。
そして答え合わせ!
全力で解いてみたが私は8問正解がやっとだった。
しかし、会場にはなんと…
15問全問正解者が1名!!
14問の正解者も1名!
13問、12問の正解者となるとゾロゾロと!
あまりに猛者揃いな客席に驚かされた。皆さん凄い!
(自分ももっと勉強しなくては…)
成績上位者からグッズのプレゼントが行われイベント終了!
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【まとめ】
「地図」という言葉を聞くと「○○図法」のような
非常に厳密に作成された地図を思い浮かべてしまうが、
今回は富士山の眺望にスポットライトを当てたこともあり、
非常に自由で大胆な発想の下に描かれた
絵地図や鳥瞰図、風景画などを楽しむことができた。
こういった芸術性の高い地図もまた趣深い。
首都からその国の最高峰を眺められるというのは
実は世界的にも非常に珍しいことであるらしい。
だったらもっともっと富士山を楽しまないと勿体ない!
この日カルカルで手に入れた
地図、地形、気象に関する様々な知識を総動員して
より美しい富士山の姿を見つけていきたいと思う。
(ライター・GAMA)