クラゲの魅力や情報すべて大放出!画期的クラゲ好き大集会!jfishプレゼンツ『クラゲの不思議な世界』ライブレポート(11.11/20開催)
2011年12月14日
奇妙な形、不思議な動き、謎だらけの生態…。
水中をゆっくりと漂うクラゲの姿を見つめていると
慌しい日常を忘れて心が和み癒されてくる。
そんな「クラゲ」だけにこだわり、
思いっきり楽しんで、知って、感じてみる
体験&交流型のクラゲイベントがカルカルで開催!
様々なクラゲの趣向を凝らした生体展示や
水族館でクラゲを担当している飼育員のトーク、
クラゲに関する大学の模擬講義や研究紹介等々、
クラゲの幻想的な雰囲気を楽しんだり、
アカデミックなクラゲの話に聞き入ったり、
硬軟取り混ぜた濃密なイベントとなった。
クラゲの不思議な世界へようこそ!
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【イベント限定メニュー】
カルカル恒例のイベント限定メニューから紹介!
これは秀逸!圧倒的なクラゲ感!
注文殺到で開演を待たずに売り切れに…。
この他に「中華クラゲのサラダ」が提供された。
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【出演者紹介】
「jfish」管理人。人呼んで”クラゲスト”。
水産大学校教授(水博)。
専門分野は浮遊生物・プランクトン。
その中でもクラゲのみを研究対象としている。
平山さんとともに「jfish」を立ち上げた。
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『jfishとは…』
クラゲが好きな人が集まり、
分からないことなどを情報交換したり
イベントなどを開いたり等、
クラゲの魅力を世に広めるとともに
クラゲに関するプロと一般の愛好家の
交流の場を提供しているサイト。
jfishホームページ
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マリンピア松島水族館でクラゲの飼育を担当。
ギヤマンクラゲとアマクサクラゲを会場に持ってきてくれた。
海洋研究開発機構JAMSTECの研究者(農博)。
2004年より新江ノ島水族館において
深海生物水槽とクラゲ展示水槽の責任者として勤務。
2007年から北里大学海洋生命科学部講師。
専門はクラゲで、深海生物も幅広く取り扱う。
1ヶ月前に行われた『中村元の超水族館ナイト』にも出演し、
深海生物の特殊な生態系について語ってくれた。
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【前半の部】
1)クラゲの魅力とは?
クラゲのスペシャリストとして活躍中の出演者の方々は
クラゲのどんなところに魅力を感じているのだろうか?
三宅先生
「クラゲとの出会いは大学4年になった時。
研究室に配属され、当時の担当の先生に
ポリプの飼育を勧められたのがキッカケです」
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『ポリプとは…』
クラゲの子供時代のひとつの姿で
イソギンチャクのような
着生生活をしている時期の形態。
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ポリプは共食いをするらしいのだが、
三宅先生は共食いが近くのモノ同士では起こらずに、
わざわざ遠くのポリプを共食いしていることに気づき
「それはなぜだろう?」と調べ始めた。
そこからミズクラゲの研究に没頭していったという。
三宅先生
「ミズクラゲは見た目はキレイだし、
特にポリプは強靭な生命力を持っているのが魅力!」
上野先生も三宅先生同様、
クラゲの研究からクラゲの魅力にハマったと語る。
上野先生は研究対象として
”生物の異常大量発生”に興味を強い持ち、
ちょうど海に大量発生していたアンドンクラゲに着目し、
研究を開始したのが始まり。
以来、ハブクラゲ、ヒクラゲ、カラカサクラゲ、
エチゼンクラゲ、キンカグラゲなどを扱ってきた。
上野先生は趣味で
クラゲを題材にした俳句を作っているとのこと。
今回その作品を一部を紹介してくれた。
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溜息の白き一滴みずくらげ 行灯
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(※行灯は上野先生の俳号)
暑中見舞いのハガキもクラゲ写真&クラゲ俳句!
(背景の写真はアンドンクラゲ)
上野先生は俳句の他にもエッセイを書いたり…
(背景の写真はエチゼンクラゲ)
仕事としてクラゲを研究するだけでなく、
クラゲを題材にした様々な創作活動を行うなど
クラゲを目一杯に楽しんでいる姿が非常に印象的だった。
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2)展示されているクラゲについて
この日カルカルに展示されたクラゲの中から
何種類かをピックアップして説明が行われた。
まず、”ベニクラゲ”!
ベニクラゲはイタリアなどの研究機関において
”若返る”ことが確認されているクラゲである。
しかし、日本では若返り現象が確認されず、
日本のベニクラゲは若返らないと考えられていた。
ところが…!
日本でもベニクラゲの若返りが確認された!
発見したのは京都大学の久保田信准教授と
いおワールドかごしま水族館の築地新光子さん。
クラゲは死ぬと体が溶けてブヨブヨの塊となって
水中に沈んでしまうが、採集したベニクラゲを
そのような状態のまま放置していたところ、
根を伸ばしてポリプへと若返る現象を確認したという。
不老不死。
地球上で若返りが確認されている生物はクラゲだけである。
続いて取り上げるのは”ギヤマンクラゲ”!
非常に透明でガラス細工のように繊細な美しいクラゲである。
山下さん
「光の加減で薄らと緑がかって見える時がより美しい!」
そして、”タコクラゲ”!
タコクラゲは体内に褐虫藻という共生藻類を蓄えていて、
褐虫藻の光合成により生じた物質をクラゲが利用している。
褐虫藻の光合成を促すため、飼育には大量の光が必要となる。
さて、タコクラゲのトレードマークは
傘の表面にある”斑点”であるが…
平山さん
「この斑点は何のためにあるとお考えですか?」
上野先生
「ひょっとしたらプロテクターなのではないかと…」
三宅先生
「役割は不明だがカルシウムを貯めておく機能だと
研究的に非常におもしろい…」
このように水族館の人気者・タコクラゲでさえも
まだまだ解明されていないことがたくさん存在する。
謎に包まれた生態。そのミステリアスな部分も
クラゲが多くの人を魅了する1つの要因かもしれない。
/*— ここで前半終了 —*/
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【休憩時間】
休憩時間と言うよりは「交流時間」と言った方が正しい。
今回のイベントには水族館や研究機関から
たくさんのクラゲのプロフェッショナルな方々が来場!!
ほんの些細な疑問から学術的な高度な質問、
飼育のノウハウや水族館の裏側まで、
クラゲのことを何でも聞けるプロアマ大交流会となった。
同じクラゲでもオキクラゲとミズクラゲでは
成長の過程が大きく異なること…等々。
もともと体が透明なので胃腔の場所が良く分かる。
「クラゲは一般家庭でも簡単に飼えます!」
ということで、飼い方の基本も教えてくれた。
下手にエアレーションを行うと
気泡が傘の中に入ってクラゲが死んでしまうので
飼育槽へのエアレーションは極力控えたい。
その制約の中で濾過をどうするか?水流をどう発生させるか?
その辺りのシステムを考えるのが
クラゲ飼育の奥深さであり、また面白さでもあると思う。
クラゲに関する書籍、DVD、ポストカードなどを販売していた。
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【後半の部】
後半は北里大学海洋生命科学部水圏生態学研究室の
三宅先生の下で研究を行っている学生さんの研究紹介と
三宅先生のクラゲに関する模擬講義が行われた。
菊池さんの研究テーマは「稚クラゲ」
(スナイロクラゲとサルシアクラゲのスケッチを紹介)
鉢クラゲ類は卵からプラヌラ幼生→ポリプ→ストロビラ
→エフィラを経て成体へと成長する生活史を辿るが、
菊地さんはその中でエフィラに着目し、
顕微鏡で観察しながら様々な稚クラゲ図鑑を作成している。
菊地さん
「観察していてクラゲの身体の構造がどんどん変化する様子が面白いです!」
クラゲは傘の部分にある感覚器で外部の刺激を捉え、
その時々での外部環境に応じた運動をするように
神経網へ電気信号を発している。
要するに、クラゲの拍動運動は神経網を伝わる信号指令と
それに対応する筋肉運動によっておこなわれるが、
このときにCa2+が必要なので、海水中のCa2+の濃度を変化させて飼育を行い、
各環境下でのクラゲの運動状態を追ってみようという試みだ。
クラゲには大きく分けて刺胞動物門と有櫛動物門に分類され、
刺胞動物門はさらにヒドロ虫網、箱虫網、鉢虫網の3種類に、
有櫛動物は有触手網と無触手網の2種類に分類される。
これらは形態による分類であるが、
見た目は同じクラゲでも生活史の異なるクラゲがいるらしい。
高山さんはこの生活史の異なるミズクラゲの謎を
遺伝子を見て解析していく研究を行っているとのこと。
3人に拍手!
これからも研究頑張ってください!
ポリプが共食いが近くのモノ同士で起こらず
わざわざ遠いところにいるポリプを共食いするのは
同じポリプから生じたクローン同士間で
共食いを避けるという自然法則が働いていたためらしい。
ムシロガイという貝の上にタマクラゲのポリプが共生する。
貝が卵を産む時期にポリプがクラゲを放出し、
貝の卵が孵化する頃にクラゲが成熟を迎える。
これによって互いの赤ちゃんが海の中で出会えるという
奇跡的な生活史の一致によって共生が成り立っている。
この奇跡的なシステムを解明していくのも
三宅先生の研究の大きなテーマの一つだという。
おもしろかった!
北里大学(相模原)がミニ水族館をオープン!
学芸員養成課程の学生さんが中心となって
展示の方法などを創意工夫して運営している水族館。
入場無料でクラゲの展示も充実しているとのこと!
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開館時間 月~金(10:00~16:00)
入場無料
学外者の見学は前日までに
海洋生命科学部事務室まで申し込みが必要
電話番号:042-778-7919
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【まとめ】
カウンターに並んだ沢山のクラゲの姿に和み、
アカデミックなクラゲトークに聞き入る…。
クラゲの不思議な世界を存分に堪能することができた。
水族館や各研究機関で日々活躍中の
クラゲのプロフェッショナルな方々が多数来場し、
これほど自由に話を聞ける機会は滅多にないことであり、
そういった意味でも非常に貴重なイベントだったと思う。
またこのような機会があれば是非参加したい。
(ライター・GAMA)